東北の山あいにカンガルーが生息しているのではという「カンガルーミステリー」は、「寝床とフンを発見した」とテレビ番組が報じるなど、ますますエスカレートしている。一方、地元ではカンガルーで「町おこし」の動きが活発になり、「カンガルー酒」が売り出され、2日足らずで120本が完売するという人気ぶりだ。
「カンガルーに車を追い越された」「田んぼの中をすごい勢いで走っていった」。7年前からカンガルーが目撃されているのは宮城県大崎市岩出山真山地区。これまでは住民の間でひっそりと語られていた「カンガルーミステリー」だが、河北新報が2009年11月26日に「カンガルー生息?!」と報じたのに続いて、朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」も11月28日に取り上げて、全国規模の騒動に発展した。
英「タイムズ」も問い合わせた?
放送からまもなく1週間経つが、ワイドショーでは連日のように「カンガルーミステリー」を報じている。
12月3日放送のTBS系「みのもんたの朝ズバッ!」には、カンガルーの寝床を発見したという地元の男性が登場した。男性は「草むらにカンガルーが寝ているような跡があった」と取材クルーを案内する。番組ではその場所にカンガルーが活発になる深夜、2日間にわたって暗視カメラを設置したが、カンガルーは現れなかった。また男性はカンガルーのフンも見つけたという。「タヌキものとはまったく違う。カンガルーじゃないか」と話していた。
フジテレビ系「とくダネ!」も12月3日、カンガルーの追跡第4弾でフンやカンガルーが食べたと思われるクローバーの残骸を放送した。
目撃現場に近い真山地区公民館には、多い日は1日10件近くの電話取材や問い合わせがきている。現地には複数のテレビの撮影クルーもいるそうだ。また、英国高級紙「タイムズ」の東京支社から「どういう状況になっているのか」と電話で問い合わせがあった、と職員は明かす。一方、全国規模の騒ぎに発展したことについて、
「真山地区に注目が集まることはいいことだと思いますが、実名が報じられた住民から、職場にメディアが押しかけて困るという苦情も寄せられています」
と、複雑な心境だ。
カンガルー酒120本が店頭販売と予約で完売
カンガルーで町おこしをしようという住民もいる。
真山地区の大場酒店が「真山カンガルー酒」を12月2日から売り出したところ、発売から2日も経たないうちに、用意していた120本が店頭販売と予約で完売した。店主の大場淳さんは、
「息子に頼まれたという年配の方や、お歳暮にするとか忘年会用にするといって、1人で10本も買っていく人もいます。ラベルを見て『あった!』といって喜んで買っていく若い方もいました」
と話している。
地元だけでなく宮崎や島根、長野、関東近辺からの予約も入っている。
カンガルー酒は田中酒造店(宮城県加美町)が製造した伝統製法の生(き)もと造りの純米酒で、「カンガルーのように軽快で弾むように次々とすすむおいしさだ」という意味を込めて名付けられた。ラベルは大場さんがデザインした。おなかの袋に一升瓶を入れたカンガルーのイラストが描かれている。
いったん完売したが、すぐに追加発注をかけたので近々店に並ぶそうだ。一過性のブームに終わらず、長く売っていきたいと大場さんは話していた。