大手飲料メーカー各社が、開発商品の絞り込みに動き始めた。主要な販売ルートであるスーパーやコンビニエンスストアなどが利益率の高いプライベートブランド(PB)商品の取り扱いを拡大し、いわゆる専門メーカー(NB)ブランドの「売れ筋」品の判定をより厳格化し、販売効率を高めようとしていることに対応するためだ。
年間の販売商品を150種類から100種類程度に削減することを打ち出したのはキリンホールディングス傘下のキリンビバレッジだ。同社は「午後の紅茶」や缶コーヒー「ファイア」などの定番商品を持つが、前田仁社長は「従来は売り上げ至上主義で、1000種類出して3種類が『定番』になればいいという姿勢だったが、全部に広告宣伝などの経営資源を投入するのは不可能。今後は利益重視に切り替える」と話す。
「定番」商品持つことが生き残りの最低条件
アサヒ飲料の岡田正昭社長も「価格の安いPB商品が台頭しており、それでもあえて当社の商品を選んでもらえるブランドをいくつ持てるかが勝負」と強調する。同社は2009年11月12日、缶コーヒーの主力ブランド「WONDA(ワンダ)」に「微糖」タイプの新商品を追加し、シェア引き上げを狙っている。
総合飲料メーカーにとっては、「缶コーヒー」「茶」「炭酸などその他」の3分野で小売店の棚に並べてもらえる「定番」商品を持つことが生き残りの最低条件とされる。「ワンダ」は1997年に初登場し、08年以降は年3000万箱(1箱30本換算)以上を売るヒット商品。それでも1億2000万箱以上の年間販売を誇るコカコーラ「ジョージア」、6500万箱以上でそれを追うサントリー「ボス」には大きく水を開けられている。
主力販売ルートであるコンビニでは、コーヒー専門店が力を入れるチルドタイプのコーヒー飲料の取り扱いが増えている。ドリップコーヒーにより近い味が消費者に受け入れられ、単価が高くても売れ行きが好調なため、缶タイプのコーヒーは「せいぜい2~3種類に限定せざるを得ない」(ローソン幹部)のが実情だ。コンビニで取り扱ってもらえなければ、飲料メーカーが自動販売機など独自の販売ルートを確保しなくてはならず、販売拡大へのハードルはいっそう高くなる。
「すきま商品」開発戦略を見直し
「ワンダ」のシェアは現在、「ジョージア」「ボス」「ダイドー」に次ぐ業界4位。同5位のキリン「ファイヤ」は、09年8月以降、商品数を大幅に絞り込み、テレビCMに大リーグ・ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手を起用してブランドのテコ入れを進めており、他のコーヒー専業メーカーの追い上げも激しい。
事業多角化で食品事業に参入し、飲料メーカーとしては後発の日本たばこ(JT)も、積極的な「すきま商品」の開発を続けてきた従来の販売戦略を見直し、3割前後の商品絞りこみを進めている。コンビニでは売れ筋商品かどうかを見極める期間が短くなっており、食品や飲料は「せいぜい1~2週間」(同上)。時間をかけて「定番」に育てるのではなく、事前に商品ターゲットを絞りこみ、効果的な前宣伝によって、販売開始後、一気に販売数量を稼ぐ――。飲料メーカーの総力戦はますます激しくなっている。