歌舞伎俳優、市川海老蔵さん(31) の鍛え上げられた肉体ぶりが話題だ。ヨガでしなやかに変身した体で、正月には1人10役をこなすハードな舞台に臨む。美女と数々の浮き名を流したのも、その変幻自在な肉体あってこそ?
東京・歌舞伎座で2009年7月にあった舞台「夏祭浪花鑑」で、市川海老蔵さんが主役の団七九郎兵衛を演じたときのことだ。演劇評論家の中村義裕さんは、思わずうなってしまった。
腹筋、きれいに6つに割れていた!
団七扮する海老蔵さんが、ふんどし1枚になって見せ場を作る。見ると、裸の上半身を支える腹筋が、きれいに6つに割れていたのだ。多くの役者が演じた人気の役で、これほど団七のイメージに近いものはなかった。
「役の表現上で、肉体の占める要素は非常に大きいんです。夏祭浪花鑑のように、伊達ぶりを争う男たちの物語では、セクシーでなければいけません。女にもてる男、侠客心を持った男として、すばらしいと納得し、感心しました」この見せ場では、田んぼの中でドロだらけになりながら、団七は、自らの義理の父を殺してしまう。その立ち回りが一層、凄みを増して見えたというのだ。
上演された7月と言えば、海老蔵さんが婚約を明かしたキャスターの小林麻央さん(27)と交際し始めて1か月ほど。麻央さんの視線が、舞台の海老蔵さんを奮い立たせたのだろうか。
海老蔵さんの、その鍛え抜かれた肉体は、ことあるごとに話題になる。
かつては、趣味のように筋肉トレーニングをしていた。朝日新聞の07年11月29日付夕刊記事によると、03年にNHKの大河ドラマ「武蔵」で主演したときは、体重90キロほどの筋肉太りした体型だった。高校時代の68キロに比べて、20キロほど多い。役作りのため、ジムなどでウェイトトレーニングに励んだ結果だ。
そして、ベンチプレスでなんと120キロを挙げるほどにもなっていた。雑誌「ターザン」の09年1月14・28日合併号のインタビューで明かしたことだ。これは、歌舞伎役者というよりも、トップアスリートのレベルかもしれない。
今度は、ヨガでしなやかな肉体に
2004年5月に襲名してからは、市川海老蔵さんは、乱れていた生活を変えた。
歌舞伎通のユーミンさんと対談した08年12月12日の読売新聞記事によると、それまでは「1か月にすしを50回食べたり、たばこも1日4箱吸ってたり」だったが、襲名後にたばこを止めた。さらに、好きだった酒を断ち、ダイエットに励むことになり、筋肉作りも止めた。東京都内で07年9月にあった舞台「ドラクル」で主役のドラキュラを演じたのがきっかけだった。
食事を1日10回、少量ずつ採るようになった。その結果、90キロあったのが、高校時代の体重にまで戻った。肉体改造ぶりはテレビでも「海老蔵ダイエット」として紹介され、ネット上でも話題になっている。
その理由について、海老蔵さんは、インタビューなどで、役作りをするためと、歌舞伎役者にとって筋肉隆々は必要ないことなどを挙げている。
ターザンの記事によると、08年10月からは、ヨガを始め、毎朝1時間かけて取り組んでいる。また、肉や魚を食べなくなり、ベジタリアンにもなったのだ。それで、演技も変わったといい、筋トレでは表現できなかった酔客の役もこなせるようになったと明かしている。今後は、色も変える柔軟なタコのようにしなやかな体にしたいという。
海老蔵さんは、正月には、10の役を50回近く変えて演じる歌舞伎公演「伊達の十役」にチャレンジする。前出の演劇評論家の中村義裕さんは、「女形が男になり、それも花道の上ですれ違いざまにゼロコンマ数秒の速さで変わらなければならないハードな舞台です。2、3キロ単位でない肉体改造をしており、ここ10年で大人になりました。期待できると思っています」と話す。
女性遍歴でも女優らと数々の浮き名を流しながらも、しなやかに乗り切り、婚約にまでこぎ着けた海老蔵さん。正月の舞台では、どのような変わり身ぶりを披露してくれるのだろうか。