鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇談会」をめぐる偽装献金問題が、新たな展開を見せている。鳩山首相の母親が、この5年間で約30億円を引き出し、そのうち9億円を鳩山氏側に提供したという。鳩山氏側は、これを「貸付金」だと主張している様子だ。親が子どもに資金を貸すことは少なくないが、今回は借用書もないといい、「贈与税を脱税している」と指摘されても仕方のない状況で、各紙の社説を見ても「鳩山批判」で論調が一致している。
新聞各社が2009年11月25日から27日にかけて報じた内容を総合すると、母親は、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」(東京都港区)が管理する自分名義の口座から、ここ数年間で約30~36億円を引き出して現金化。04年から08年の5年間にわたって、そのうち約9億円が鳩山氏側に渡っていたという。
鳩山氏側から元本も利息も支払われていない?
この現金を受け取ったとされる元公設第一秘書=収支報告書に虚偽記載をしたとして解任=は、母親から首相への「貸付金」だと主張しているという。ところが、(1)鳩山氏側から元本も利息も支払われていない(2)貸付金額や利息などの条件を記した借用書なども作成されていないという。これが果たして「貸し付け」と呼べるのか、批判を浴びている。
例えば、国税庁のウェブサイト上のQ&Aの「贈与税」というコーナーに、「親から金銭を借りた場合」という項目があり、それによると、
「借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません」
と、親から借りること自体は贈与にはならないとしながらも、
「その借入金が無利子などの場合には利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額は、贈与として取り扱われる場合があります。なお、実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や『ある時払いの催促なし』又は『出世払い』というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます」
ともあり、利息を支払っていなかったり、返済計画が曖昧な場合は、「贈与」として課税の対象になるとの見方だ。
連日各紙が同様に厳しい論陣を張っている
個人の贈与の場合、贈与税がかからずに済む(基礎控除)のは年間110万円以内。仮に今回の「貸し付け」が「贈与」だと判断された場合、この基礎控除額を大幅に上回ることになり、数億円単位での贈与税の支払い義務が発生するものとみられ、「脱税」との批判の声も上がりそうだ。
こうしたことから、新聞各紙は鳩山首相への批判を強めており、社説の見出しを見ただけでも、連日、各紙が同様に厳しい論陣を張っていることが分かる。
「偽装献金問題 首相は会見して説明を」(毎日新聞、11月26日)
「鳩山献金疑惑―『ずさん』にも限度がある」(朝日新聞、11月26日)
「鳩山家資産 やはり参考人招致が必要」(産経新聞、11月26日)
「首相はなお口をつぐむのか」(日経新聞、11月27日)
「首相偽装献金 『検察に任せる』は通用しない(読売新聞、11月28日)
このような状況でも、鳩山首相は11月30日の参院本会議で
「仮に母親からの資金提供があったとすれば、検察の解明を待ち、法に照らして適切な対応を取りたい」
と、人ごとのような態度に終始している。