J・フロントリテイリング傘下の大丸、松坂屋やそごう・西武などの大手百貨店が2009年12月中に冬物衣料品セールを実施する。大手百貨店の冬物セールは1月実施が慣例だが、その前例を破って年末商戦と冬物セールを同時実施する形となる。
民間企業の今冬のボーナスは夏に続いて大幅な前年割れと見込まれ、消費の一段の冷え込みが予想されるだけに、目先の売り上げ確保を優先せざるを得ない百貨店業界の苦境を反映している。
リーマン・ショックから丸1年過ぎても二ケタ減
「『百貨店はこうだ』と勝手に決めているから、こんなにだめになったんだ」。百貨店が置かれた苦境に危機感を募らすJフロントの奥田務社長は09年春、大阪・梅田店に大手紳士服量販店のはるやま商事をテナントとして誘致したのに続き、最近も、幹部らに対し、前例に縛られない売り場改革を要求し続けている。冬物セールの12月への前倒しはその一環だが、客足の回復に明確な自信があるわけではなさそうだ。
全国百貨店の10月の売上高は、既存店ベースで前年同月比10.5%減の5135億円で、3カ月ぶりに減少幅が2ケタに拡大した。日本百貨店協会では、08年のリーマン・ショックから丸1年が過ぎたことから、「そろそろ前年並みの水準で下げ止まってほしい」(飯岡瀬一・専務理事)と期待していた。その足掛かりとして10月1日から始めたのが、全国の百貨店共通の販売促進活動だ。それだけに「予想以上の厳しさだ」とショックを隠さない。
11月以降も明るさはまったく見えていない。東京地区の主要百貨店のうち、18日までの中間集計で対前年比の減少率が1ケタにとどまったのは、ポイントアップキャンペーンを実施した松坂屋上野(前年同期比91.8%)のほか、東武池袋(同92.9%)、松屋浅草(同90.8%)、京王新宿(同90.9%)の4店のみ。その他14店は軒並み2ケタ減が続き、特に東急渋谷本店は同76.1%、阪急有楽町は同78.7%減など20%以上の落ち込みになっている。百貨店の主力である紳士・婦人衣料部門が、低価格の専門店などに食われ、回復の兆しすら見えないのが理由だ。