米アマゾン社が全世界で発売した電子ブック「キンドル」が人気を呼んでいる。現在は日本語に対応していないものの、日本版の提供も視野に入れている様子で、一部では、「すでにプロトタイプ(試作品)は完成、発売は間近」との情報もある。日本語版が売れれば、本や雑誌をディズプレイ上で見る習慣が国内でも根付く可能性もある。
調査会社のインプレスR&Dによると、08年度の国内電子書籍市場は464億円で、前年度に比べて31%も拡大している。しかし、このうち86%をケータイ向けが占め、約4割の伸びを見せている。一方、PC向けは前年度比16%減の62億円で、02年の調査開始以来、初めてのマイナスに転じている。
米国の販売価格は279ドル
ケータイ向けコンテンツが市場を牽引している形で、インプレスでは
「今後の市場拡大のためには、スマートフォンなど新しいプラットフォームの普及が待たれる」
と分析。この「新しいプラットフォーム」が、まもなく国内に本格的に登場しそうだ。
注目されているのは米アマゾンが2007年に発売した「キンドル」で、液晶よりも読みやすい6インチの画面を備えているのが特徴。第3世代携帯電話(3G)の通信網を使って、書籍などのデータを最大1500冊取り込むことができる。英語の書籍を35万冊以上配信しており、品揃えの良さもうけている。価格は279ドル(約2万5000円)。
アマゾンの09年第3四半期(7~9月)の決算は、売上高が前年同期比28%増の54億4900万ドル(約4700億円)で、純利益が同69%増の1億9900万ドル(約180億円)。キンドルの販売台数は公表されていないものの、キンドルの好調ぶりが同社の業績を押し上げている形だ。
このキンドルが、09年10月19日、日本を含む世界約100か国で発売された。現段階では英語にしか対応しておらず、日本国内での販売台数が伸びるとは考えにくい。
日本版のプロトタイプを完成?
ただし、アマゾンのプロダクトマジメントディレクターのチャーリー・トリッツシュラー氏は、09年10月21日の日経産業新聞で
「日本ではまず、28万冊の英語書籍に加え、フランスやスペインなどラテン語系の新聞記事を提供する。いつとは言えないが、日本語を含むあらゆる言語の電子書籍を提供することを視野に入れている」
と述べており、日本語版の登場もそう遠くはない様子だ。
さらに、台湾の大手PDAメーカーが、すでにキンドル日本版のプロトタイプを完成させているとの情報もある。これが本当であれば、日本版の登場は間近だと言えそうだ。
国内の出版業界も、キンドルに対抗する動きを見せている。講談社や集英社など出版50社は、2010年1月から雑誌をデジタル化するための実証実験を開始し、11年をめどに雑誌の内容をPCやケータイ向けに有料配信できる体制を目指す。
さらに、09年11月25日の日経新聞によると、グーグルが2010年中に書籍の内容を有料でPC上で読めるサービスを国内で開始するという。
今後、電子書籍のデファクトスタンダードをめぐる争いが本格化しそうだ。