牛丼チェーン店の値下げは続くか――。松屋が他に先駆けて値下げを実施し、吉野家、すき家も期間限定ではじめている。両社とも「現段階では継続する予定はない」としているが、専門家は「まわりの出方を見ているのでは」とも言っている。
松屋フーズは2009年11月26日、主力商品の牛めし・豚めしの値下げを発表した。12月3日から実施する。豚めし(並)は320円が290円に、牛めし(並)は380円が320円になり、最大で60円の引きだ。
「吉野家」3杯食べると1杯無料
松屋フーズ広報・IRグループは「11月5~16日の値引きキャンペーンが好評だった。この期間の売上も回復していた。松屋では品質・味には特に力を入れていたが、この経済状況の中、価格においても訴求していきたい」と実施に踏み切った経緯を明かす。
ゼンショーの「すき家」では11月20日~12月7日、牛丼全品31円引きキャンペーンを行っている。通常は330円の牛丼「並盛」が299円になる。広報室は、「すき家では顧客の動向を見ながら時折、日頃の感謝を込めたキャンペーンを行っている。値下げによるお得感をよりアピールしたかった」と言う。継続的な実施は「現段階では考えていない」ということだった。
吉野家では10月16日~11月16日、期間中に3杯食べると1杯を無料にするキャンペーンを実施した。すでにキャンペーンは終了しており、引き替え期間は11月30日までだ。今後の値下げについて、社長室広報は「今のところ予定はない」とした。
「不況時のセオリーではある」
船井総合研究所の経営支援部フードビジネスグループ・チーフコンサルタントの二杉明宏さんは、牛丼チェーンの値下げに「不況時のセオリーではある。政府のデフレ宣言があった影響も考えられる」と指摘する。もっとも、松屋以外が継続を足踏みしているのは「まわりの出方を見ているのでは」とも言う。
牛丼店は回転率が重視される業種だ。それだけに、顧客をいかに呼び込めるかが鍵となる。それに、牛丼チェーン店の10月までの既存店売上は、松屋6か月連続、すき家が9か月連続、吉野家が8か月連続前年割れと苦戦が強いられていた。
こうした状況を「コンビニや百貨店も低価格弁当を仕掛けてきた。働く人たちのランチ事情が考えられる。選択肢が増えてきたことで、顧客の奪い合いがある」と分析する。二杉さんは、値下げによって顧客数を確保するのにくわえ、利益が出る仕組み作りとPRの仕方が重要になるだろう、と話していた。