医療現場でも広く使われている漢方薬が、政府の事業仕分けで健康保険の適用外の方向とされ、医療界から反発の声も出ている。価格が3倍以上になって、治療に支障が出るというのだ。どこまでが本当なのか。
漢方薬が保険適用外の方向になったのは、行政刷新会議ワーキンググループが2009年11月11日に行った事業仕分けの中だった。そこでは、湿布薬やうがい薬とともに、漢方薬の保険適用がやり玉に挙がった。
適用外になれば全額自己負担になる
漢方薬などは調剤薬局やドラッグストアでも医療用の類似薬が販売されており、医師が保険を適用して処方する必要性が乏しいというのだ。そのうえで、市販品類似薬を保険外とする方向性を結論づけた。ただし、どの範囲の薬を適用外にするかについては、今後、厚労省などで議論すべきだとしている。
これまで、患者は、保険適用の漢方薬では、3割を自己負担するだけで済んだ。ところが、適用外になれば、医師からの処方箋もいらず自由だが、全額自己負担になるということだ。つまり、ある範囲の医療用漢方薬がすべて、一般用医薬品(OTC)の漢方薬になる。
日本東洋医学会によると、保険適用の漢方薬は149種類、OTCが200種類ある。そして、OTCと同じ成分の適用薬が多いため、149種類のほとんどが適用外になるのではないかとみている。
医師の7~8割が現在も漢方薬を処方しているとされ、保険適用外の方向について、医療界からの反発は強い。
まず、漢方薬には、西洋医学では治しにくい病気に効いたり、それを補完したりするものがあることだ。例えば、ぼうこう炎では、抗生物質より漢方薬の方がしっしんは出にくいとされる。また、乳がんでは、抑うつ状態を解消する漢方薬があり、抗がん剤を補完できる。さらに、副作用があったり、長期の経過観察が必要だったりする漢方薬もあり、この場合、医師の診断が必要になってくる。
こうしたケースでも、保険適用外になると、患者が漢方薬を利用しなくなって、治療に支障が出るのではないかというのだ。