「米ドル売り」が止まらない。2009年11月27日の東京外国為替市場は、米ドル円相場が一時1ドル=84円82銭まで急落。14年ぶりの高値水準を記録した前日と比べて、さらに2円程度の円高ドル安となった。
米国の超低金利政策が当分続くと予想され、投資マネーのドル離れが加速している。ドル安はいったいどこまで進むのか――。米ドル円史上最安値である「1ドル=79円75銭」がチラついてきた。
ドル安が進む背景には、低金利の通貨で資金調達して高金利通貨に投資して利益を得る「キャリートレード」があるようだ。たとえば、日本がゼロ金利政策をとっていた頃は、金利の低い「円」を借りて、相対的に金利の高いドルで運用する手法が流行った。それが、最近は金利の低い米ドルを借りて、相対的に金利の高い豪ドルなどで運用するといった「ドルキャリー」取引が流行っている。
ドルで借りて、高金利の通貨で運用する
あるFX関係者は、この「ドルキャリー」取引を使って利益を得ている米ヘッジファンドの存在を気にする。米ヘッジファンドは08年秋のリーマン・ショック以降、投資の表舞台から姿を消していたと思われているが、その一部は最近、好成績を残しているとされる。
米国の低金利政策によって、米ヘッジファンドはドルで資金を調達して他の通貨に投資する「ドルキャリー」取引で利益を上げているとみられている。
例年、米ヘッジファンドは決算期の11~12月に他国(他通貨)で運用していた資金を本国に戻す。つまり、ドルを買い戻すから、本来であればドルは高くなる。しかし現状は、米国の低金利政策が長期化しそうなことから、米ヘッジファンド以外の多くの投資家は安心して「ドルキャリー」取引を続けられると判断し、ドルで借りて、高金利の通貨で運用している。つまり、ドル資金を調達し、借りたドルを売って他の通貨を買っているので、ドル高にはならないのだ。
その一方で、決算時に利食いしてしまった(ドルを買い戻してしまった)米ヘッジファンドは、米国の低金利政策が当面続くことで、「ドルキャリー」取引を年明けに再開。それによって大量のドル売りが心配されているというわけだ。