東北の山あいに「カンガルーが生息しているのではないか」と噂になっている。7年前から目撃情報はあったが、こんなことを口にしたらバカにされる、と住民は口をつぐんでいた。しかし、テレビ取材をきっかけに20人もの目撃証言が出た。「親子2頭がひょっこり出てきた」「車の横をカンガルーに追い越された」といったものだが、本当にカンガルーは生息しているのだろうか。
噂になっているのは宮城県大崎市岩出山の真山地区。430世帯1400人が暮らす山に囲まれた地域だ。冬は20センチから30センチの積雪があり、夜行性のカンガルーは昼、山に潜み、夜に街に降りてきて道路や農園の近くに出没するのだという。
話すと「バカにされる」と語らずにいた
目撃は7年ほど前からあった。しかし、真山地区では一部の人しか知らない情報だった。話しても信じてもらえるはずはなく、バカにされると思っていたからだ。住民がカンガルーについて語るようになったのは、朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」の取材があったため。地元の宮城県の2人の男子中学生(中3)が番組に、
「中学の理科の先生から真山という地区に野生のカンガルーがいるらしい。道路をピョンピョン跳んでいるところを見た人がいるというが、僕たちは絶対にウソだと思う」
と、調査依頼をしたことがきっかけだった。撮影クルーは2009年11月1日に現地に入った。
大崎市役所真山地区公民館の担当者によれば、撮影クルーが目撃情報を得るため、街ゆく人に聞いて歩いた。すると驚愕の事実が明らかになった。
「バカにされる」と語らずにいたが、自分以外もカンガルーを見た人がいると知り、驚く人が続出した。クルーに目撃したと語ったのは20人ほどいた。カンガルーだと思われる動物は、体長が1メートルから1.5メートル。「道をぴょんぴょん跳ねていた」というものから、「田んぼをすごい勢いで移動した」「カンガルーに車を追い越された」というものまであったという。
野生のカンガルーが冬を越すのは難しい?
真山地区公民館の担当者は、
「鹿やイタチなどの野生動物と見間違えたのではないか、と思っていたが、目撃した人が相当数いて、しかも信じるに足るような情報もあるため、あながち嘘だと言えなくなっています」
と打ち明ける。
仙台市にある「八木山動物公園」の専門家はどう見ているのだろうか。問い合わせてみると、
「動物園にいるカンガルーは、冬も日中は外に出しますが、夜は暖房のある部屋にいます。暖かい場所を見つけていないかぎり、野生のカンガルーが冬を越すのは難しいと考えられます」
ということだった。カンガルーが本当に生息しているのかどうかは「謎」のまま。大崎市が今後、カンガルーが生息しているかどうか調べる予定は今のところなく、
「仮に生息していたとしても、そっとしてあげてほしい」
という要望も真山地区公民館にきているのだそうだ。