「デフレ宣言」巡り 政府と日銀が火花

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   政府と日本銀行がデフレ経済下の政策運営で、火花を散らしている。政府は2009年11月20日、11月の月例経済報告に「緩やかなデフレ状況にある」との文言を盛り込み、日本経済が3年5カ月ぶりにデフレに舞い戻ったと認定。菅直人副総理兼経済財政担当相は20日の閣議後会見で「金融の果たすべき役割は多い」と日銀にデフレ対策を要望した。一方の日銀は同日の金融政策決定会合で、景気判断を上方修正。物価については「資源価格の上昇によって、上振れる可能性がある」との表現を織り交ぜるなど、政府からの金融緩和圧力を避けるのに懸命だ。

   月例経済報告を議論した関係閣僚会議では、亀井静香金融相が日銀の西村清彦副総裁に牙をむく一幕があった。日銀は、堅調な新興国向けの輸出にけん引されてデフレ下でも景気が緩やかに回復するとのシナリオを描くが、亀井金融相は「希望的観測だ」と一蹴。菅副総理も「(危機対応の金融政策を解除する)出口戦略を取るのは少し早い」と日銀に注文を付けた。

大型の景気対策補正予算通しやすくするため?

   政府はデフレ認定の理由について、消費者物価の下落が続いていることや、名目成長率が2四半期連続で実質成長率を下回る「名実逆転」が起きたことなどを挙げている。ただ、この時期の認定には「大型の景気対策補正予算を通しやすくするためでは」(エコノミスト)との見方もある。物価下落が消費低迷などを通じて景気をさらに悪化させる「デフレスパイラル」を回避するために、政策を総動員する地ならしという訳だ。

   ただ、安易な財政出動には、藤井裕久財務相が「お金(予算)をつけたからといって物価が上がるものではない」とけん制。菅副総理も、補正予算は規模より効率を目指す姿勢を示している。税収が伸び悩み、2009年度の国債発行が50兆円を上回ることが確実視される中、財政対応には限界がある。

   そこで頼みの綱が日銀だが、政策金利(無担保コール翌日物)は既に年0.1%まで下がり、利下げ余地はほとんど無い。市場に大量の資金を供給する量的緩和政策を復活させる選択肢もあるが、国内であふれたカネが新興国などに投じられ、バブルを起こす可能性は否定できない。現実に米国の住宅バブルは、日中の資金が米国債を買い支えし、低金利が続いたことが一因だ。

景気は7~9月期を境に減速に転じるとの見方

   財政出動を迫られた民主党政権が、日銀に国債の直接買い入れを迫る懸念もあるが、中央銀行の信頼性に関わる問題だけに日銀は絶対に避けたいところだ。

   このため日銀の白川方明総裁は20日の会見で、さまざまな予防線を張った。「物価下落が続いている」という認識は政府と共有しつつも、デフレと認定することは避け、「(足もとの物価下落は)需要の弱さが原因」と指摘し、市場に資金を流しても抜本的な解決にはならないとの考えを示した。さらに「企業の成長機会を確保することが重要」とし、政府の構造改革こそが優先されるとの見解を披露した。

   いずれにしても、景気は7~9月期を境に減速に転じるとの見方が強く、政府と日銀が責任のなすりつけ合いをしている余裕はない。まずは政府が中長期的な成長戦略を示して市場に安心感を与え、日銀も超低金利政策などで景気を下支えする姿勢をより強く見せることが必要のようだ。

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