ハンカチ王子こと早大のエース、斎藤佑樹投手(21)が、「将来は政治家になりたい」と明かして話題になっている。本業の野球の方は、「期待外れ」との厳しい声も聞かれる。転身も考えているのか。
スポーツ紙各紙によると、斎藤佑樹投手が早稲田摂陵中・高で2009年11月24日に行った講演で、次のように話すと、約600人の生徒らからはどよめきが起こったという。
「今は金融や日本の経済に興味があって、将来のためにも勉強したいと思っていました。将来は政治家になりたいと思っています。一つの夢ですね」
スカウトから「期待外れ」の声も
早大教育学部3年の斎藤投手は、社会科学の専攻を選び、金融工学のゼミに所属しているという。講演後には、政治家希望について「リップサービスです」と言って笑ったというが、どこまでが本心に近いのか。
というのも、最近、野球における斎藤投手の評判は、あまり芳しくないものが多い。東京ドームで22日に行われたプロ選抜と大学日本代表との記念試合では、先発として1回を投げ、2安打1四球1失点と思わしくない内容だった。
同世代である巨人の坂本勇人内野手(20)に、いきなり先頭打者左前打を許し、その後も四球と適時打で先制点を与えてしまった。晴れ舞台でも球速は146キロ止まりで、東京スポーツによると、プロ野球のスカウトから「期待外れ」の声が噴出したという。
東京六大学野球のリーグ戦でも09年秋は、3勝2敗に留まり、終盤戦は不調で打ち込まれた。早大も、入学以来最も悪いリーグ4位に留まっている。1年生のときの斎藤投手は、80年ぶりの開幕投手勝利を収め、その後のリーグ優勝にも貢献した。しかし、現在の斎藤投手に対しては、「プロで通用しない」と評価されることも多くなっている。
理由は、変化球の決め球がないのに球速が150キロを超えず、フォームも小さくまとまり過ぎているといったものだ。夏の甲子園で死闘を演じたライバルの楽天・田中将大投手(21)との差が広がったとも指摘されている。
田中将大投手との差は?
日刊スポーツによると、プロ選抜戦後に、斎藤佑樹投手は、「プロはすごく近くなった気がするけど、まだまだ遠い」と漏らしていた。また、サンケイスポーツでは、プロ入りを延ばした理由について、「早大を出ていい社会人になりたかった」というトークを紹介している。
政界転身は先だとしても、早大卒業後に別の道に進むことはあるのか。
球界に詳しいスポーツジャーナリストの岡田忠さんは、「野球は続けていくでしょう」と言う。「大学卒でやめるわけではなく、プロで通用しなかったらあきらめるということだと思います」
実際、2010年秋のドラフト会議で、ロッテが早くも斎藤投手の1位指名を表明し、ヤクルトや阪神も1位指名候補にしたと報じられており、スポーツ紙では、プロ入りは確実だとする見方が多い。
岡田さんは、指名表明については、実力より人気狙いだとみる。
「球団には、採って損はしない素材だということがあります。ビッグネームで宣伝効果がありますし、それなりに使えると思っているのでしょう」
もっとも、今の実力ではプロで通用しないとの見方だ。
「プロ選抜戦で、坂本勇人選手に対し、変化球であの高さでは打たれます。フォームが悪く、球が高めに浮いています。左足を突っ張っているうえ、あごを引っ込めずに顔が空を向いているんですよ。146キロでは、コースが甘いと打たれます。もっと下半身を鍛えて、低めに投げるようにならないと。プロの試合で成長し実績もできた田中将大投手とは、まったく差がありますよ」
ただ、プロで通用し、田中投手に追いつくだけの素質はあるという。
「練習に手抜きがあったわけではなく、『やってやろう』と力み過ぎているのでしょう。プロ選抜戦も、速い球を投げようと力んで、上半身だけになっています。しかし、『期待外れ』というほど、ひどくはないと思います。球種を判断できる頭のよさがありますし、来シーズン頑張って成長すれば、プロでもそこそこやれると思っています。斎藤投手は、これからプロで通用するかどうかの段階ということですね」