「文章がきれい」「泣いたよ」
これを機に、出演する番組も増えた。当時は実に、テレビの仕事9割が「テリーさんのおかげ」。そのためか、「愛人疑惑」も囁かれたのだとおどけるが、電話番号さえ交換していなかったそうだ。番組では、自分から発言できないでいると、「若菜はどう思う?」と聞いてくる。自分の意見には皆が首をかしげたというのに、彼だけは「分かる!」「そうか!」「なるほど!」と必ず肯定してくれて、「若菜が言いたいのは」とフォローまでしてくれたと明かす。
「10代のアイドルに求められるのは、昔も今も変わらず現代っ子感。当時の今どきといえば、ガン黒のコギャル。一方私は黒髪の色白。しかも利口じゃない。番組から求められる要素なんて一つも持っていない。でも、テリーさんは『面白い、面白い』と言ってくださいます」
その後も、女優の仕事を始めると、ラジオ・テレビを通じてエールを送ってくれた。お礼を言うと、本人は「当たり前のことを言っただけだよ。(好きな女優は)酒井若菜に決まってんだろ」「よく頑張ってるな。いいぞ」と相変わらず優しく、声をかけてくれるのだ。この時はちょうど、仕事がうまくいかない時期で、涙が止まらなかったという。
いずれにしろ、深夜番組の一件から溢れるように出てきた思い出は、芸能人ブログでは異例とも言える長文、4162文字に及んだ。この記述は公開後すぐさま「はてなブックマーク」で反響を呼び、1000件近くがブックマークされている。書き込みには、「職場で昼間から涙でました」「人を育てるってこういうことか」「頑張っているひとをひとは見てくれている。がんばらないと」「いい話だー。泣いたよ」とエピソードの面白さがうけた。
一方で、酒井さんの文章がいいという評判もあり、「タイトルがすでにいいもんな」「文章がきれい」「こんなに文才があるとは知らなかった」。また別の人は「率直な文体が気持ち良い。こういう話が聞けるようになったのは、本当にブログの凄いところだと思う。一気に芸能人が身近に感じられる」と書いた。酒井さんの文章が、ブログの面白さを改めて示してくれたようだ。