タレントの酒井若菜さん(29)のブログが評判を呼んでいる。演出家のテリー伊藤さん(59)がしてくれたことを語る内容が、「泣かせる」というのだ。そして、それを伝える文章の上手さ、雰囲気もうけている。
話題となっているのは、酒井さんが2009年11月23日に書いたブログ記事「心がおぼつかない夜に」だ。なかなか寝付けなかった数か月前のある夜、たまたまつけた深夜のNHKテレビ番組がきっかけで、思い出すことがあった。
黒子役に「あなたはどう思う?」
テレビ番組では、ファッションデザイナーが作った洋服を審査する場面が流れていた。この時、ある審査員が「良かったな。ほんとに、良かったな」と何度も声をかけているのを見て、もらい泣きしてしまった。「私もこの人に、良かったな、と言われたことがある」と思い至ったからだ。その人物こそ、演出家のテリー伊藤さんだった。
酒井さんは「今となってはご存知のかたは少ないと思いますが、私の芸能界の育ての親は、テリーさんです」として、いくつかのエピソードを語りはじめる――。
エキストラの仕事と平行して、グラビアの仕事を始めたばかりの10年前のことだ。テリーさん司会の深夜番組で「番組アシスタント」になることが決まった。その仕事は収録中、ホワイトボードにメモを記載したり、資料を配付したりする、いわば「黒子」役である。基本的にはテレビに映ることもない。黙々とホワイトボードに向かう収録が続いていたのが、ある日突然、テリーさんは「あなたはどう思う?」と話をふってきたのだ。
話をふること自体、あり得ないことだった。ところが、自分なりの考えを述べる酒井さんを気に入ったテリーさんは「今日から、若菜の席は、俺の隣りな」「この子、面白いよ。間違いないから」と勧めてくれた。その結果、MCアシスタントとして起用されることになったのだ。「そんな例、いまだに聞いたことありません」。周囲のスタッフも戸惑ったほどだったらしい。