「列車に乗ること」自体を目的とする旅行、「鉄旅」が人気だ。男性鉄道マニアに加え、最近では「鉄子」と呼ばれる鉄道好きの若い女性、道中をゆっくり楽しみたいとする団塊世代が人気を牽引しているようだ。旅行会社は新たな顧客層獲得を狙って、続々と関連ツアーを計画している。
「久しぶりのヒットでした。ここまで鉄道人気が広がっていると思っていなかった」と驚きを隠さないのは日本旅行の広報担当者だ。
「ブルートレイン復活」ネットで1分ほどで完売
13年前に廃止となった寝台特急「つるぎ」(大阪-新潟間)を復活運転する「ブルートレイン復活運転 おもいでのつるぎ号の旅」(2009年11月27日・11月28日実施)は4万3800円~(大人)と2泊3日の国内旅行としては決して安くはない。それでも、参加者170人をインターネットなどで募ったところ、1分ほどで完売したという。
参加者は20代~50代と幅広い。また、かつては男性がほぼ100%だったのに、今回は女性参加者が15%いた。「鉄子」と呼ばれる女性鉄道ファンの急増が影響したのではないかと同社は見ている。
「弊社はJR西日本の子会社ということもあり、列車需要が落ち込む中、新たに鉄道マニアに加わった若い女性に列車の魅力をアピールしていけるチャンスだと考えています」(同広報担当者)
と意気込む。関連ツアーの第2弾、第3弾も計画中という。
JTBでは同社サイト内に09年から「鉄旅」専用サイトを開設している。全国の「鉄旅」ツアーを掲載するとともに、20~30代の女性をターゲットに、各地の列車の魅力を女子大生などが伝える「鉄道ガールズプロジェクト」と題したコンテンツも配信している。「旅」をテーマにしたコンピレーションCDアルバム「tabiuta 旅へ 歌と~鉄旅ガールズrecommend~」を発売するほどの力の入れようだ。同社広報担当者は、「この鉄道人気を国内旅行の活性化につなげたい」と話す。
旅行の楽しみ方に変化出てきた
一方、鉄道マニアの増加だけが人気の要因ではないと指摘する声もある。「列車」をテーマにしたツアー参加者が前年比30%増だった近畿日本ツーリストでは、列車を貸し切り、熊本県~鹿児島県にまたがる肥薩線を2泊3日でゆっくりと回る「ブルートレイン貸切列車 紅葉めぐりツアー」(09年11月27日実施)などを企画、予約が殺到しているという。
「人気の背景には、消費者の旅行の楽しみ方に変化が出てきたことがあると思います。最短時間で目的地に行き、忙しく観光名所をいくつも回るという従来型のツアーではなく、道中も目的と捉え、その間をのんびり、ゆっくりと過ごしたいと考える人が団塊世代を中心に増えきたと実感しています」(同社広報担当者)
同社では、今後も「ゆったり」をキーワードに、「鉄旅」関連のツアーを増やしていく方針だ。