嘉手納統合案は一番まともなプラン?
では、鳩山政権はどう考えているのか。岡田克也外相は11月20日の記者会見で「私の考えは下地さんと同じではない」と断りつつも、嘉手納基地の機能の一部を国内の他空港に移すというプランを否定しなかった。
「私は嘉手納への統合だと思っている」。岡田外相がそう述べて、私案を明らかにしたのは10月23日の記者会見だ。それ以来、岡田外相は「嘉手納統合案は、騒音レベルが現在よりも減ることが大前提」と繰り返し述べているが、嘉手納基地の騒音を減らすためには、米軍機の離発着訓練を減らすか、他に移すしかない。その意味では、下地議員のプランは岡田外相の腹案と重なる部分があるともいえるのだ。
この嘉手納統合案は、現行計画(辺野古移設)を唯一の案とする米国からは反発を受け、地元市町村の反対も強い。しかし「嘉手納統合案しかない」という意見もある。前出の田岡さんは、
「嘉手納統合案はもともと、1996年に普天間基地返還が決まった当初に日本側が唱えていた案で、一番まともなプランだ。新たに基地を作る必要がないので、時間的にも財政的にもメリットが大きい。仮に辺野古に決めても、来年1月の名護市長選で反対派が当選すれば、計画の実施段階で支障が起きる」
と話す。嘉手納案に対しては、海兵隊のヘリコプターと空軍のジェット機が混在することになり、航空管制上の危険が大きいという指摘もある。米空軍が反対しているとされるゆえんだ。だが、田岡さんは、
「嘉手納基地よりも狭く、滑走路も1本の那覇空港では、旅客機や陸海空自衛隊の戦闘機、ヘリコプター、哨戒機など8組織のありとあらゆる種類の機体を管制している。嘉手納の管制官の腕が極端に悪くないかぎり、管制ができないわけがない」
と反論する。実はかつて、米国側からも嘉手納統合案が提案されたことがある。ラムズフェルド氏が国防長官をつとめていた2005年、普天間問題の行き詰まりに焦りを感じた国防総省から提示されたのだ。このときは日本側が拒んで、廃案になってしまった。その背景について田岡さんは、
「なぜ日本側が断ったかといえば、利権の問題がからんでいる。公共事業が必要とされない嘉手納案では地元に金が落ちないためだ」
と指摘している。しかし4年前と現在では政治状況が違う。つまり日本側の姿勢しだいでは、嘉手納案も十分可能性があるというわけだ。岡田外相も11月20日の会見で、
「(嘉手納基地の)運用上の難しさについては、受忍できないような程度のものなのかどうか、検証の必要がある。本当に受忍できないようなものであれば、それは客観的に分かるわけだから、アメリカ側から提案しただろうか。これが私の疑問の一つだ」
と述べ、米国側を説得する余地があるという考えを匂わせた。