経営不振がささやかれる毎日新聞が、共同通信社から国内ニュースの配信を受ける方針を固めた様子だ。「発表もの」は共同記事を使い、自社の記者を独自取材に振り向けられるという利点が期待できる一方、リストラ策の一環だとの見方もある。だが、「配信を受けたところでリストラは進まない」との指摘も出ている。
地方紙は地元のニュースは自前で取材し、いわゆる「全国ニュース」については、共同通信に加盟費を支払って、同社から記事の配信を受けていることが多い。
「駐在」や「通信部」が大量廃止になる?
毎日新聞は、現段階では共同通信への加盟について「決まったものはない」としている
一方、朝日・読売・毎日は、海外ニュースに限って共同から記事配信を受けているが、国内ニュースについては自前の取材網を全国に持っており、共同記事の配信は受けていない。ところが、毎日新聞が、共同通信に加盟し、国内ニュースの配信を受ける方針なのだという。11月下旬にも、役員会で決定されるとの情報もある。
毎日新聞社の08年度の売上高(単体)は前年比7.2%減の1380億8500万円で、経常利益は前年度の21億6100万円の黒字から26億9500万円の赤字に転落している。景気後退に伴う販売収入と広告収入の落ち込みが影響した形で、同社が09年6月に公表した有価証券報告書でも
「当社グループにおいても新聞業界を覆う不況の影響は顕著」
とある。
このことから、今回の共同加盟は、リストラ策の一環だと受け止められており、現場の記者の間では、
「支局は減らないものの、2010年春の段階で、さらに小規模な『駐在』や『通信部』が大量に廃止になるらしい」
という話もささやかれている。もっとも、毎日新聞社側は「ご指摘のような取材拠点の縮小は予定していません」と否定している。
海外や東京のネタは強いが、地方は弱い共同通信
毎日新聞社の常務取締役(営業・総合メディア担当)などを歴任し、「新聞社-破綻したビジネスモデル」(新潮社)などの著書があるジャーナリストの河内孝さんによると、01年頃にも共同加盟に向けた構想があったものの、一部役員や労組の反対で頓挫したという。ただ、加盟のメリットについては否定的だ。
「発表ものでない独自取材が進むという面はあるのですが、毎日新聞にとって物理的なメリットは少ないといっていいでしょう。支局の記者をリストラするのは不可能です。なぜならば、共同は海外ネタや東京のネタは強いですが、ほとんど地方に記者は置いていません。例えばある県で言えば、毎日の支局には記者が30人いるのに対して共同は5。共同の最大の顧客は地方紙ですが、地方紙が必要としているのは海外や東京のニュースだからです」
つまり、共同に加盟したとしても、地方の取材網については維持を迫られるとの見方だ。ただし、
「もはや『朝・毎・読』ではない、という意識改革を促すことになる」
と、社員の危機感を煽る材料にはなりそうだ。一方、
「かなりディスカウントしているとは思いますが、加盟費が入るのと、『朝・毎・読の一角が自らの軍門に下った』ということのインパクトは大きいでしょう」
と、共同側には大きなメリットがあるようだ。
なお、当事者の2社は、
「ご指摘の点について現段階で決まったものはありません」(毎日新聞社社長室広報担当)
「決まっていません」(共同通信社総務局)
としているが、加盟に向けての交渉が行われていることについては否定していない。