金価格が高騰を続けている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)は2009年11月16日に、取引の中心である12月ものが前週末(同13日)に比べて22.5ドル高い1トロイオンス1139.2ドルで取引を終え、その後の時間外取引で1144.2ドルまで上昇して、過去最高値を更新した。前週末に記録した過去最高(1116.70ドル)を連日更新する勢いで、背景には「ドル安」があり、「多少の調整はあるだろうが、(上昇は)しばらくは止まらない」(市場関係者)という。
ニューヨーク市場の高騰を受けて、金は日本でも上昇基調にある。11月17日の東京工業品取引所の金(標準)取引は終値で、前日比2円安の1グラムあたり3259円。しかし、年初来最高値は前日(3261円)で、17日は今年2番目の高値だった。
ちなみに、日本では「円高ドル安」の影響で円ベースの金価格の過去最高値(1982年9月9日の4326円)にはまだ及ばない。
中国やインドが金を買っている
金高騰の背景には「ドル安」がある。「ドルベースの資産価値が下がっているので、安全資産の金にシフトしているようです」(東京工業品取引所)と話す。ドル預金や外国証拠金(FX)取引の投資マネーが流れ込んでいるというのだ。
ドル安は対円ばかりではなく、対ユーロなどでも売られる場面が目立ち、ドルと逆の動きをしやすい金の「買い」機運を高めたこともある。米国の超低金利政策が長期化する見通しでドルの先安観がさらに強まっていることから、金は当面「買い」が続くと予測する向きは多い。
「まだ上がる」という声は根強いが、そこには中国やインドの存在がある。中国やインドは金需要が旺盛なことで知られるが、この両国の経済成長が順調なことに加えて、インドなどの中央銀行が金の購入に積極的になっているとの見方が「買い」を誘ったとされる。
株高も金投資にプラス?
ニューヨークは株式市場も上昇に転じている。週明け11月16日のNYダウ工業株30種平均は前週末の終値と比べて136.49ドル高の1万406.96ドルとなり、08年10月2日の1万482.85ドル以来約13か月ぶりの高値で引けた。
このNYの株高も金投資にプラスに働いている、という見方も出ている。当初は、金の価格が1000ドルを超えると「売り」が進むとみられていたが、株式市場が順調なことで、「投資家のリスクに対する許容度が高まっていて、現状では安心して他の金融資産に分散投資できている」(前出の市場関係者)と分析している。
一方、国内では利益確保を狙った「現物売り」が増えている。貴金属販売の田中貴金属工業の直営店「GINZA TANAKA」ではここ2、3週間、通常の約2~3倍の来店客でにぎわっている。「売り」のお客が圧倒的で、約8割がそれにあたる。
11月17日の小売価格は、前日比30円高の1グラムあたり3455円の高値水準。「3300~3400円の価格だと利益が出ると判断しているようです」と話している。