「オバマ大統領も使っている」という触れ込みで知名度が上がった「ツイッター(Twitter)」だが、オバマ大統領が市民との対話集会で「ツイッターは一度もやったことがない」と発言し、波紋を広げている。選挙期間中はオバマ陣営のインターネットの活用が注目され、ブラックベリーを手に全米を駆け回る姿が印象的だったのに、このイメージを覆す出来事だ。
これまで「オバマ大統領が使っている」と信じられていたのは、「BarackObama」というツイッターのアカウントだ。名前と自己紹介の欄には「バラク・オバマ」「第44代アメリカ合衆国大統領」とあり、このアカウントをフォローしているのは226万人を超えている。
「親指では上手く電話のキーが押せないんです」
内容面では、ノーベル平和賞の受賞が決まった直後の2009年10月10日には、「Humbled(身の引き締まる思い)」とだけ書き込まれたことが話題になった。最後の書き込みは、11月15日の
「シンガポールで、アジア訪問を続行中。外遊についての最新情報は、ホワイトハウスのブログでご覧下さい」
というもので、本人が書いているようにも、大統領側近のスタッフが書いているようにも見える。
それが、思わぬ形で、オバマ大統領は自らがツイッターをやったことがないことを明言することになってしまった。舞台となったのは、オバマ大統領が09年11月16日、中国・上海で地元大学生ら約500人を対象に開いた対話集会だ。
ハンツマン中国大使が、大使館のウェブサイトに寄せられた質問を紹介する形で
「3億5000万人のインターネット利用者と6000万人のブロガーがいる国で、ファイヤーウォールがあることをご存じですか?私たちは自由にツイッターを使えるべきだと思いますか?」
と、中国国内のネット規制を遠回しに批判する内容の質問をすると、オバマ大統領は
「まず最初に、私はツイッターを一度も使ったことがないということを申し上げておきます」
と切り出した。その上で、
「不器用なので、親指では上手く電話のキーが押せないんです。ですが、私は大いに技術を信じていますし、情報流通という観点からすれば、『開放性(オープンネス)』を信じています」
と続けた。さらに、このように述べ、中国政府のネット規制を強く批判。「ツイッターは使えるべき」との立場を鮮明にした。
「私はいつも、開かれたインターネットの利用を強く支持してきました。検閲が無い状態を強く支持します。これは、これまでに私がお話ししてきた米国の伝統の一部ですし、異なる国であれば異なる伝統があることも分かっています。しかし、米国では自由なインターネットがあるという事実は申し上げられますし、制限なくインターネットにアクセスできることが力の源です。そして、これは促進されるべきことだと思うのです」
日本国内でも「ショックですね」とつぶやく
オバマ大統領が自身でツイッターを使っていたと信じていた米国民やネットユーザーにとっては「肩すかし」となった形だ。これを受けて、若干の逆風も吹き始めたようだ。
例えばロサンゼルス・タイムズ紙は、大統領の「親指が不器用」という発言が「聴衆の笑いを誘った」とした上で、
「選挙では対立候補だったジョン・マケイン上院議員は、(ベトナム)戦争でずたずたになった指で、何とかツイッターにまとまった文章を書いたことを指摘しておかなければならない」
と、ウェブサイト上のコラムで指摘。マケイン氏はオバマ氏が大統領に就任した直後の09年1月下旬にツイッターを始め、09年3月には、「ツイッタビュー(Twitterview)」と銘打って、米ABCの取材にツイッター上で応じてもいる。いわば、ロサンゼルス・タイムズ紙のコラムは、「年長者で指が不自由なマケイン氏が自分でやっているのに、何故オバマ大統領は自分でやっていないのか」という趣旨のようだ。
日本国内に目を転じても、やはり波紋を広げているようで、例えば「ツイッター議員」として知られる藤末健三参院議員は、この事実を知って「ショックですね」とツイッター上でつぶやいている。一方、「Twitter社会論」(洋泉社)などの著書があるジャーナリストの津田大介さんは
「まぁ普通に社長ブログとか有名人ブログとかゴーストが書いてたりすること多いしね。オバマは象徴的存在としてよく語られるけど、post(投稿)数は本当に少なかったし、メルマガ的なリアルタイム情報告知が中心で使われていたから、その意味ではあんま不思議ではないかな」
とつぶやいており、比較的冷静に受け止めているようだ。