ドラマで主役が着た服などを、番組ホームページを通じて売る関西テレビの試みが、論議を呼んでいる。テレビ不況から生まれた苦肉の策とはいえ、公共の電波を使って広告と境界があいまいな放送を流していいのかということだ。
「つまらない服を着ていると、つまらない人生になるわよ」
フジテレビ系で2009年10月13日から放送中の関西テレビ制作「リアル・クローズ」で、女優の黒木瞳さん(49)演じるデパートのカリスマ部長、神保美姫がつぶやくフレーズだ。
タレントの香里奈さん、服などをPR
この連続ドラマは、タレントの香里奈さん(25)扮するデパート勤務の主人公、天野絹恵が、婦人服売り場の担当になってファッションに目覚め、仕事にも活躍していく姿を描く。視聴者は、香里奈さんらが身につけている服やアクセサリーなどを、番組ホームページにリンクされた通販サイトを通じて、放送とリアルタイムで購入することができる。
「すてきなお知らせです。ドラマの中で私たちが着ている服がゲットできちゃいます!」
放送では、番組の最後に、香里奈さんがドラマの視聴者にこうアピールした。
関西テレビの企業広報部によると、この仕組みを、ホームページにリンクを張っていることから「オンエア・リンク」と呼んでいる。ドラマに導入した理由について、同部では、「衣装などの問い合わせが多いので、視聴者サービスの一環として始めました。また、番組の宣伝も兼ねています」と説明する。
もっとも、大幅な広告減収の影響についても、「収入は意識の中にはあります」と認めている。オンエア・リンクの導入は、今のところこの番組だけで、他のテレビ局の導入の動きについては聞いていないという。
「作品をしっかり作ってほしい」
「リアル・クローズ」の服などを売る通販サイトでは、9社14ブランドを扱っている。関西テレビによると、商品1点の平均販売額は、数千円。高いものでは、2、3万円のもある。初回放送では、ドラマのホームページにアクセスが集中してサーバがダウンした。子会社の関西テレビハッズが商品を販売しており、初回からの計3話で、2400点ほどが売れた。
ただ、回を追うごとに、商品の売り上げは落ちてきているという。
番組については、公共の電波を使っていながら、ドラマと広告との境界があいまいだとの批判がある。朝日新聞が2009年10月11日にこの問題を取り上げたのをきっかけに、関西テレビは、第三者が番組を評価する社内の「オンブズ・カンテレ委員会」で議論してもらっている。
同16日に開かれた委員会では、「新たな試みを行うのは大切」と理解する向きもあった。が、「作品をしっかり作ってほしい」「販売する製品についての品質管理などもしっかりやっていかなければならない」といった厳しい意見も出た。
関西テレビの企業広報部では、「ドラマでの試みは、最終回まで続けます。商品の苦情などの問い合わせには、子会社が対応しています。様々なリスクを考慮に入れ、オンエア・リンクに問題点があるのかないのか、今後結論を出していきたい」と話している。