「日米関係と批判とをてんびんにかけた」
また、共同通信の2009年11月16日付サイト記事によると、保守系のフォックス・テレビは、外国の要人に頭を下げるのは、「米国の大統領として不適切」と批判した。米政府高官は、外交儀礼のおじぎを政治問題化するのは的外れと反論しているというが、米メディアは、オバマ大統領の90度おじぎについて、「低姿勢過ぎる」と批判を強めているようだ。
異文化コミュニケーションに詳しいランゲージサービス会社「エム・アンド・パートナーズ インターナショナル」代表の桃原則子氏は、大統領のおじきは戦略的なものだったのではないかとみる。
「普天間基地の移転問題で日米関係が悪くなり、大統領の滞在も日本より中国の方が長く『ジャパン・ナッシング』などと呼ばれたりしています。アメリカが日本から離れていくのではと考える日本人に対し、オバマさんは、『そうではないよ』というメッセージを伝えたかったのだと思います」
桃原氏は、大統領が日本に特別深い理解があるわけではないとして、レクチャーした人物がいるのではないかとみる。それは、90度おじぎが日本では「最敬礼」に当たるということを知っている人物だ。
オバマ大統領は、09年4月も、サウジアラビアのアブドラ国王におじぎをしたとして、批判されている。それなのに、なぜまた天皇陛下に対しても行ったのか。
「オバマさんが、日米関係と批判とをてんびんにかけたということでしょう。批判されるのは分かっていながらも、リスクを背負っても日米関係の利益を取ったというわけです。鳩山首相へのおじぎなら低姿勢になるかもしれませんが、天皇陛下になら低姿勢ということではありません。王室の伝統のないアメリカ人にとっては、天皇は特別の存在になるからです。オバマさんなりに合理的に考えて、日本への気遣いを示したということだと思います」