「沖縄県民の期待だけを煽って、一体、どうおさめようというのか」
だが、日米関係を悪化させかねないこの発言に対しては、自民党の石破茂政調会長が「首相の(大統領に対する)背信行為だ」と厳しく批判。政権内部でも、15日にNHKの討論番組に出演した長島昭久防衛政務官が
「オバマさんは演説の中で今の日米合意を迅速に実行するという言い方をされている。それにもかかわらず、総理は『今の合意を前提にするわけでもない』というお話をされて、正直、一瞬びっくりした」
と発言し、困惑を隠さなかった。
県外移設も視野に入れているとされる鳩山首相の姿勢には、閣僚のなかからも異論があがっている。沖縄の米軍基地を緊急視察し、地元首長と意見交換した岡田克也外相は16日の会見で、問題解決までの時間が限られていることを指摘したうえで、
「自民党政権のもとで、すでに米軍再編について一定の合意がなされているなかで、それを白紙に戻して議論するという選択は、私は非常に難しいと思う」
と県外移設に否定的な見解を改めて示した。
しかし、このような政権内外の逆風も「宇宙人」の鳩山首相にはどこ吹く風のようだ。16日朝、首相公邸前で記者団に次のように語ったのだ。
「日米合意は当然重視するとオバマ大統領には申し上げた。しかし、その合意のもとにすべてを決めるという話であれば、議論する必要がなくなる。議論する意味というものを、オバマ大統領も実際にはよくわかってくださっている」
問題解決の道筋が見えないどころか、道を覆う霧がどんどん深くなっていくようにみえる普天間問題。態度のはっきりしない政権を尻目に、沖縄では県外移設を求める声が高まっている。このままズルズルと年を越し、1月の名護市長選を迎えれば、さらなる「百家争鳴」状態を招くことはほぼ明らかだ。
このような混乱状態に対して、普天間基地返還を合意した橋本龍太郎政権で首相秘書官を担当した経験をもつ江田憲司衆院議員(みんなの党)は、自らのホームページのコラムで痛烈な批判を浴びせている。
「最も致命的なことは、この政権で誰一人、当時のように、血ヘドを吐き、地べたをはいずり回るような調整もせず、沖縄の声にも真摯に向き合わず、『やれ県外だ、国外だ』『いや嘉手納への移転だ』と『ほざいている』だけのところだ。
県外や国外への移設。それに越したことはないだろう。であるならば、そんなことは、ある程度、県外や国外に具体的な移設先を想定し、実現可能性を探った上で言うべきだろう。しかし、この政権では一切、そうしたことをした形跡がない。いたずらに、沖縄県民の期待だけを煽って、一体、どうおさめようというのか。私には、もう『パンドラの箱』を開けてしまったようにしか思えない」