沖縄の米軍普天間基地の移設をめぐって、鳩山政権が迷走を続けている。来日したオバマ米大統領との首脳会談で解決に向かうかと思いきや、「過去の日米合意」を前提にするオバマ大統領と、「日米合意にはしばられない」という鳩山首相の違いが会談のあとに表面化した。揺れ動く「鳩山発言」には政権内外から異論が噴出。深まる一方の混迷状態に対して、「パンドラの箱を開けてしまった」との声も出ている。
2009年11月13日に東京で開かれた日米首脳会談は、鳩山首相とオバマ大統領が笑顔で語り合い、両国の強い絆を再確認したかにみえた。しかし普天間基地の移設という最重要課題は本格的に議論されることなく、先送り。新たに設けられた「閣僚級の作業グループ」で話し合われることとされた。
共同会見でみえていたオバマと鳩山の間の「亀裂」
この作業グループには日米の外務・防衛担当閣僚が首席代表として参加することになっているが、そこで何を議論するのか、鳩山首相とオバマ大統領では理解が違うようだ。亀裂は13日の首脳会談後に行われた共同記者会見ですでにあらわれていた。
鳩山首相は、普天間基地に関する首脳会談の内容として、
「日本政府としても前政権の日米合意はやはり重く受け止めている旨、ただ選挙の時に、自分たちが沖縄県民に県外・国外への移設を申し上げたことも事実である旨申し上げた。また、そのことによって沖縄県民の期待感は強まっているということもあると申し上げた」
と述べ、過去の日米合意にしばられずに議論したいという姿勢を暗に示した。しかし、隣にいたオバマ大統領は、
「日米両国は在沖米軍の再編に関する二国政府間合意の実施(implementation of the agreement that our two governments reached)に焦点をあてるハイレベルのワーキング・グループを設置した」
と発言。作業グループの目的は、あくまでも「日米合意の実施」にあるとした。オバマ大統領は翌14日に東京・赤坂のサントリーホールで行った講演でも
「我々(オバマ大統領と鳩山首相)は、沖縄駐留米軍の再編に関して両国政府が達成した合意を実施するために、共同作業グループを通して迅速に進めてゆくことで合意した」
と話し、名護市の辺野古沿岸部に移設するという自民党政権時代の日米合意が大前提であるとする米国側の姿勢を明確にした。
ところが選挙前に「最低でも県外移設」と発言し、総理就任後も現行計画を前提としない姿勢を明らかにしていた鳩山首相は14日、訪問先のシンガポールで、オバマ大統領への反論を試みる。
「オバマ大統領の気持ちからすれば、『日米合意が前提だ』という思いもあるだろうが、それならばわざわざ日米で作業部会をつくる必要もない。答えが決まっているのであれば意味がない」
鳩山首相にしてみれば、オバマ大統領の演説が大々的に報道されることで「日米合意が前提」という米国側の主張が既成事実化することを恐れたのかもしれない。