消費者金融大手の収益悪化に歯止めがかからない。2006年6月の改正貸金業法の完全施行で、個人向け融資を年収の3分の1に制限する「総量規制」が実施されるのに備え、各社とも貸し出しを抑制。貸し出し金利の低下とあいまって利息収入が落ち込んでいる。 貸し出し抑制が行き過ぎると、個人事業者などの資金繰りに悪影響が生じかねないため、金融庁は運用面で総量規制を緩和できないか検討を始める方針だ。消費者金融業界も淡い期待を抱いている。
アコムも追加リストラに追い込まれる
消費者金融大手4社のうち、プロミス、アコム、武富士の09年中間連結決算はいずれも、売上高にあたる営業収益が12.9~35.6%の減収。プロミス、アコムは最終(当期)利益も減益となった。武富士は最終増益となったものの、過払い利息の返還に備えた引当金を前期中に積み増していた反動。一方、私的整理の一種である「事業再生ADR(裁判外紛争手続き)」による経営再建を進めているアイフルは、過払い利息の返還負担が重くのしかかり、通期で3110億円の最終赤字を見込む。
こうした事態に、三菱UFJフィナンシャル・グループという後ろ盾を持つアコムも、追加のリストラに追い込まれた。社員の約2割にあたる550人の希望退職を募集するほか、11年度までに全国の有人店舗を現在の118店から45店に削減する。これらのリストラ費用で通期決算は最終赤字に転落する見通しだ。木下盛好社長は「こうした経営体質強化策で利益を確保したい」と話す。
2010年6月には顧客が半減?
しかし、一定のリストラさえすれば大手4社が危機を乗り切れるかといえば、心もとない。8月末の貸付金残高は、4社とも前年同期比1~3割減少した。総量規制の実施を控え、貸し付けを徐々に絞っているためだが、市場規模はさらに縮小する可能性がある。業界団体の「日本貸金業協会」が実施したアンケートでは、現在の借入利用者の半分が既に年収の3分の1を超える借金をしている。このままだと、2010年6月には顧客が半減しかねない状況なのだ。消費者金融大手幹部は「不況で年収が減れば、さらに減少する懸念もある」と警戒感を強める。
一方、総量規制が実施されれば、運転資金を消費者金融に頼っている個人事業主の資金繰りに影響を及ぼしかねず、中小・零細企業の資金繰り対策を進めている政府も頭を悩ましている。ただ、単純な延期は多重債務問題の解決を目指す改正貸金業法の理念に反することにもなるため、金融庁は近く、運用面で総量規制の影響を緩和できないか検討を始める方針だ。消費者金融業界側も「政治への働きかけを強める」(大手首脳)と息巻いており、年末にかけて業界の出方と金融庁の対応が注目される。