脳科学おばあちゃんこと久保田カヨ子さん(78)がテレビで説く「超英才教育」が話題になっている。著名な脳科学者である夫の理論をもとに、ユニークな脳トレーニングを提唱しており、それが賛否両論を呼んでいるのだ。
「今ごろ何心配しとんねん」「お前、東大出かって言いたいよ」
子育てを説くときの、久保田カヨ子さんの歯に衣着せぬ物言いは激しい。ダミ声を張り上げ、やや大げさに手を振りながら説教する。これらは、フジテレビ系で2009年11月8日放送のバラエティ番組「エチカの鏡」で、芸能人らに浴びせられた言葉だ。
夫の理論を育児に活用
カヨ子さんは、著名な脳科学者の久保田競京大名誉教授の妻だ。夫の理論を育児に活用し、脳の司令室とされる前頭連合野をトレーニングするユニークな子育てを説いている。
それを実践するための「脳研工房」の社長をしており、番組によると、近く育児の教科書を出版するという。番組では、息子の東大入学に成功したそのメソッドを「0歳からの超英才教育」と紹介した。夫との共著で「赤ちゃん教育‐脳のいい子は歩くまでにきまる」(リヨン社)なども出版し、学習塾がメソッドをもとにした幼児教室を開いており、活動は広がりをみせているようだ。
「エチカの鏡」では、半年前からカヨ子さんの子育てを紹介しており、8日は愛知県内にある脳研工房での活動が取り上げられた。そこでは、スカウトした赤ちゃんモデルとその親の4組を会社に招き、様々なトレーニングを体験してもらってデータを収集していた。
ペットボトルを利用したおもちゃでは、アクセサリーなどを入れた違うタイプを用意し、それを赤ちゃんモデルの前で振ってみせた。視覚と聴覚でそれらの違いを理解し、好きなものを選ぶことによって、判断力を養う前頭連合野のトレーニングになるという。カヨ子さんは、「キョロキョロ見ているでしょ。これで2つ選んでますねん」と解説していた。
科学的な裏付けがないのでは、という疑問も
また、「エチカの鏡」の番組中、久保田カヨ子さんは、芸能人らの子育て相談に乗り、厳しいアドバイスを連発した。
タレントの羽野晶紀さん(41)が、ホウレン草などの野菜を食べない5歳の長男の悩みを打ち明けると、「そう見くびったらあかん、子どもを!」と一喝した。子どもを料理作りに参加させれば野菜に興味を持ち、その達成感から感謝して食べるようになるというのだ。「これは嫌いだけど、食べないといけないから食べようっていうのは脳でしょう」とカヨ子さん。嫌いなものを食べるときには動機や理由を考えるため、前頭連合野のトレーニングになるというのだ。
半年間の番組放送中に、カヨ子さんは、0歳児の脳は急成長しており、歩き始めるまでに賢い脳になるか決まるなどと持論を繰り返した。1日に5回以上「いない、いない、ばあ」をして視線を集中させ、脳に刺激を与えるなどの7か条の育児法を唱え、トレーニングの大切さを説いている。
こうした脳トレ術について、ネット上では、説得力があるかどうか賛否両論だ。ブログなどでは、モデルケースとして必ずしも間違っていないという意見のほか、経験則に過ぎず科学的な裏付けがないのでは、と疑問も出ている。
カヨ子さんの持論について、ある脳科学者は、「生まれてから数年間は、人もサルも脳が発達するのですごく大事」とある程度理解を示す。しかし、ペットボトルのトレーニングなどには、「昔からある、ガラガラのおもちゃと同じでしょう。当たり前に言われていることを示しただけではないか」とみる。
別の脳科学者は、「ご主張に近い研究を知らないし、ないと思います。サルでしか分かっていないことを、人間の知能にまで当てはめるのもどうか。想像の域を出ないので、効果があると言うのは危ないし、いい影響を与えないでしょう」と疑問を示す。ただ、「おばあちゃんが脳科学の話を聞いて知恵を出したというのなら、面白いと思います。科学的根拠は必ずしも明らかではないなどと、言い方を工夫してほしいですね」と話している。