日米関係の冷え込みが指摘されるなか、初来日したオバマ大統領は2009年11月14日、東京・赤坂のサントリーホールでアジア政策に関するスピーチを行った。米国が「太平洋国家」であることを強調、アジア諸国との関係を強化していく方針を述べた。聴衆はスタンディングオベーションで大統領を迎え、特にアジア・太平洋地域との関わりや、拉致問題に触れたくだりでは、会場から大きな拍手が起こった。
演説が始まったのは午前10時過ぎだが、入場手続きが始まったのは、その2時間前の8時ごろ。小雨が降っていたが、ホールの職員からは「傘は持ち込めません。入り口で預けて下さい。折りたたみはカバンの中へ」とのアナウンスが繰り返されていた。傘も何か「武器」に使われる可能性がある、ということらしい。入り口脇では、鈴木宗男衆院議員と外務省出身の佐藤優氏が、険しい表情をして立ち話をするなど、有名人も多数訪れていた。
拍手や歓声が起こる場面が何度も
入り口では厳重なセキュリティーチェックが行われた。金属探知機の他、警察官がカバンを開けて隅々まで検査。航空機の国際線同様、ペットボトルの持ち込みも禁じられた。ホールに入場したのは、米国大使館からの招待客など約1500人だが、開場から1時間以上が経過した9時10分過ぎになっても、まだ列は続いていた。
オバマ大統領の演説では、一貫して米国と太平洋とのつながり・パートナーシップが強調され、拍手や歓声が起こる場面も多かった。
例えば、演説冒頭、聴衆に対して
「みなさんは2つの国の結びつきを強くするために働いている」
と語りかけた直後に拍手が起きたのを始めとして、
「日本の小浜市の人に私の感謝の気持ちを伝えずにはいられない」
との発言には、会場から大歓声が起こった。
それ以外にも、沖縄の米軍基地問題に関連して
「対等で相互に協力する関係を維持するよう努力したい」
と述べた点や、北朝鮮に対して、孤立化ではなく国際社会に歩み寄るように迫るくだりで、
「6か国協議への復帰、非核化。拉致被害について家族に明らかにすることが必要」
などと述べたくだりでは、会場から大きな拍手が起こっていた。
「最初の太平洋出身の大統領として、パートナーシップを強化する」
オバマ大統領は、約40分に及んだ演説の最後でも
「これらの(演説で述べてきた)取り組みを、アジア・太平洋の国として行っていきたい。この地域で人格形成した経歴を持つ大統領としてやっていきたい。(朝鮮半島の)南の人は恐怖からの自由、北は欠乏からの自由を。これが米国のアジェンダだ。最初の太平洋出身の大統領として、パートナーシップを強化することを約束する」
と、米国とアジア太平洋地域とのつながりを強調。会場では、1分近くにわたってスタンディングオベーションが続いた。
ただし、決して聴衆全員が「拍手喝采」という訳ではなく、ホール前の囲み取材では、沖縄県の自治体関係者が、オバマ大統領がミャンマーや中国での人権問題について触れたことから、「人権を守るなら、まず沖縄から守って欲しい」ともらす一幕もあった。