大手旅行各社が学生向けの割安海外ツアーを売り始めている。背景にあるのは、若年層の「旅行離れ」。20~24歳の出国者数は8年前の3分の2程度まで落ち込んでおり、各社とも各種の割引プランを用意して、なんとか学生を取り込もうと必死だ。
阪急交通は2009年10月、学生限定のパッケージツアーを発売した。学生を対象とした商品は5年ぶりで、関西空港発だと添乗員なしでパリ5日間が6万9800円、ロンドン6日間が7万9800円とかなり安くなっている。応募には学生証の確認が必要だ。
「なんすか?ナスカ? ペルー 8日間」
また、同社が強く推しているのが、添乗員付きのツアーだ。11月4日には、成田発のツアーを発売。ローマ・フィレンツェ・ベネチア・ミラノを巡るイタリア8日間の旅が9万9800円となっている。このツアーには添乗員が同行するほか、全食事付き。同社広報担当者は「海外旅行がちょっと億劫な学生でも安心です」と語る。また、学生限定のツアー出発日も設定されており、学生同士だけの気楽な旅が楽しめるという。
JTB西日本も、学生向け商品「ガクタビ」の目玉として、1月出発は30名限定、2・3月出発は各20名限定で、ロンドン7日間やパリ7日間が9万9900円のツアーを販売している。そのほかにも、「なんすか?ナスカ? ペルー 8日間」とダジャレのツアー名も用意、同社広報担当者は、
「ベタベタなダジャレにしてとっつきやすくしました」
と話している。
旅行会社が、学生の取り込みに積極的なのには理由がある。法務省が発表した出入国管理統計によれば、20歳から24歳までの日本人の出入国者数は、08年は109万人。8年前の00年は166万人だったので、この8年間で3分の2程度まで落ちこんでいる。
若者の旅行離れ「危機感を感じる」
若者の旅行離れに「非常に危機感を感じています」というのは日本旅行の担当者。同社も、11月13日から10年春の学生旅行ツアーを発売する。大英博物館見学ツアーが付くロンドン7日間が8万5800円、モンサン・ミッシェルツアー付きのパリ7日間が9万6900円と、前年よりも約15%の値下げとなっている。
更に、12月25日のクリスマスまでに申し込むと3000円割引されるほか、6名以上のグループで申し込むと幹事は10000円の割引と、各種割引プランを用意した。
「昔は就職前に卒業旅行に行くというのが当たり前でしたが、価値観の多様化もあって最近はそうでもなくなってしまいました」
と担当者は語る。最近の学生は、子どもの頃に親に連れられて海外旅行を経験していることも多く、卒業前に海外に行っておきたいという欲求が低い。また、不況で経済的に行きにくくなっているということもあり、
「このまま若い世代が大きくなってしまいますと、旅行という習慣自体がなくなってしまうかも知れません。若い内に海外を見て、旅の魅力を知って頂ければ」
と話している。