2012年に人類が滅亡する――。こんなデマがまたまた出回っている。マヤ文明の長期暦「マヤ暦」が2012年の冬至付近で終わるのを根拠に、「隕石が地球にぶつかる」「大地震、大津波が起こる」などというのだ。人類滅亡の映画「2012」の公開が迫っていることも手伝って、ネットでは、「2012年、人類はどうなるんでしょうか?」といった質問が真面目に書き込まれている。
「ムー」は別冊で特集を組む
2012年人類滅亡説はマヤ文明の長期暦「マヤ暦」が2012年の冬至付近で終わることが発端になっている。ニビルと呼ばれる正体不明の惑星が地球に衝突し、地球の極が移動する「ポールシフト」が起こって、大きな気候変動や大地震、大津波が発生。人類が滅亡するというストーリーになっている。
「Yahoo!知恵袋」や「教えて!goo」には、「2012年、人類はどうなるんでしょうか?」「2012年12月22日に今の人類は滅亡するのですか?」「2012年に地球滅亡しますか??」などと書き込まれている。検索エンジン「Google」で「2012年」と打ち込むと、「地球滅亡」「問題」「予言」といったキーワードが上位に出てくることからも、関心が高いようだ。
こうした人類滅亡説は以前にも唱えられた。1999年にも地球が滅びると話題になり、「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになった。2012年滅亡説についてもたくさん書籍が出ている。「2012年の黙示録」「2012年アセンション最後の真実」「2012年地球は滅亡する!」「新説2012年地球人類進化論」といった具合だ。
超常現象を扱っている雑誌「ムー」はたびたび2012年滅亡説を取り上げている。09年11月25日に別冊を発売し、全150ページ中、半分を割く予定だ。ムー編集部員は、
「2012年の終末説について、いろんなことが言われていますが、何が起こるか本当のところはわかりません。ただ、太陽は11年の周期で大きくなったり小さくなったりしており、2011年から12年前後に極大期になります。ここ数百年の間でもっとも活発になると科学的に推測されていて、太陽フレア(太陽の爆発現象)が異常発生して地球温暖化が進むほか、電磁波障害が起こりパソコンや電気機器に影響を及ぼす心配があるとみられています」
といっている。
世界が変わって欲しいという願望がブームを生む
09年11月21日に公開される映画「2012」は、マヤ暦の終末説がもとになっている。アメリカでは恐怖に駆られて、米航空宇宙局(NASA)に問い合わせる人が続出した。NASAはウエブサイトで滅亡説を否定している。
国立天文台にも、「2012年に本当に隕石が落ちてくるのか」といった問い合わせがきている。担当者は、
「隕石がぶつかるとか、地球の回転バランスが不安定になるポールシフトが起こるとか、あり得ません。ニビルも存在しません。確かに、太陽の活動は2013年頃に活発になりますが、異常ということはありません」
といっている。
「と学会」の会長でSF作家の山本弘さんは、2012年の終末説について、
「何も根拠のないことです。太陽が次の周期で拡大することについても、これまで何百回と起きていますが、何も起こっていないじゃないですか。電磁波障害が起こればパソコンの心配はありますが、人類滅亡にはつながりません」
と一蹴する。
2012年に銀河系の地帯「フォトンベルト」に太陽系が突入し、大異変が起こると言われていることも、山本さんは「でっち上げだ」という。オーストラリアのUFO研究誌で1981年に紹介されて広がった説だが、もとはオーストラリアの女子大生が言い始めたもの。女子大生は2012年に起こるとは言っていなく、誰かが後からくっつけたようだ。
「滅亡説は10年周期くらいで出てきています。映画を楽しむ分にはいいですが、心配なこともあります。2012年に人類が滅亡し、『アセンション』という高次元に進化するという説が新興宗教やオカルトの類がいっていて、本気にしたらまずいと思います」
ところで、終末説がたびたび話題になるのはなぜなのか。山本さんは、
「やっぱり、この世界が変わって欲しいという願望があるんじゃないでしょうか。行き詰まりを感じ、こんな世界をぶっ壊してほしいと、やけくそなんだと思います。ノストラダムスの大予言が話題になった1974年にも、公害問題やオイルショックと暗い話題が多く、破滅ブームがありましたから」
と話している。ちなみに「と学会」の「と」とは「トンデモ本」から取ったそうだ。