世界が変わって欲しいという願望がブームを生む
09年11月21日に公開される映画「2012」は、マヤ暦の終末説がもとになっている。アメリカでは恐怖に駆られて、米航空宇宙局(NASA)に問い合わせる人が続出した。NASAはウエブサイトで滅亡説を否定している。
国立天文台にも、「2012年に本当に隕石が落ちてくるのか」といった問い合わせがきている。担当者は、
「隕石がぶつかるとか、地球の回転バランスが不安定になるポールシフトが起こるとか、あり得ません。ニビルも存在しません。確かに、太陽の活動は2013年頃に活発になりますが、異常ということはありません」
といっている。
「と学会」の会長でSF作家の山本弘さんは、2012年の終末説について、
「何も根拠のないことです。太陽が次の周期で拡大することについても、これまで何百回と起きていますが、何も起こっていないじゃないですか。電磁波障害が起こればパソコンの心配はありますが、人類滅亡にはつながりません」
と一蹴する。
2012年に銀河系の地帯「フォトンベルト」に太陽系が突入し、大異変が起こると言われていることも、山本さんは「でっち上げだ」という。オーストラリアのUFO研究誌で1981年に紹介されて広がった説だが、もとはオーストラリアの女子大生が言い始めたもの。女子大生は2012年に起こるとは言っていなく、誰かが後からくっつけたようだ。
「滅亡説は10年周期くらいで出てきています。映画を楽しむ分にはいいですが、心配なこともあります。2012年に人類が滅亡し、『アセンション』という高次元に進化するという説が新興宗教やオカルトの類がいっていて、本気にしたらまずいと思います」
ところで、終末説がたびたび話題になるのはなぜなのか。山本さんは、
「やっぱり、この世界が変わって欲しいという願望があるんじゃないでしょうか。行き詰まりを感じ、こんな世界をぶっ壊してほしいと、やけくそなんだと思います。ノストラダムスの大予言が話題になった1974年にも、公害問題やオイルショックと暗い話題が多く、破滅ブームがありましたから」
と話している。ちなみに「と学会」の「と」とは「トンデモ本」から取ったそうだ。