「国家戦略室」や「行政刷新会議」も財務官僚に占拠
そして、首班指名国会にも今度の臨時国会にも、内閣法や国会法の改正が出されていないことも気がかりだった。そのために、鳩山内閣の目玉だったはずの「国家戦略室」や「行政刷新会議」が、まったく機能せずに、「財務官僚に占拠された」との見方が強くなっている。たしかに、相当数の財務官僚が事務局ポストなどに就き、日に日に影響力を増しているようだ。
その象徴は、行政刷新会議の下のワーキンググループ事件だ。当初は、枝野議員以下32人の民主党議員が参加し、ワーキンググループを設けて事業仕分けを行うことになった。ところが、その後、小沢幹事長らからクレームがつき、1年生議員らは引き上げになって、結局7人になってしまったという。
これは、表面的には、仙谷氏と小沢氏との連絡不足ということになっているが、実は国会法の改正を民主党がさぼっていたことが効いている。国会法第39条では、国会議員は、大臣、副大臣政務官等を除いて政府との兼職が原則禁止されており、そもそも、仙谷氏の意向だけで、国会議員は政府機関である行政刷新会議を手伝えないのだ。
この国会法改正などの「第一歩」ができていないために、例えば、菅戦略相や仙谷行政刷新相が、政治主導の運営を目指し、従来なら官僚が就いていた「事務局長」や「次長」といったポストに民主党議員をつけようとしても、法律上できない状態になっているのだ。「財務官僚の占拠」は、いわば、国会法の制約で生じている間隙に財務官僚が入り込んできたとも言える。
こうした状況で、民主党は官僚、特に財務省に完全に屈服したようだ。今回の郵政人事はそれを示している。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。