4億円もの所得申告漏れがあった脳科学者の茂木健一郎氏(47)が、自分で申告作業をしていたため忙しかったと弁明していることに疑問が出ている。これだけ巨額な額の作業なのに、なぜ税理士をつけなかったのかということだ。
「仕事がずっと忙しくて書類もたくさんあるので、なかなか自分で整理する時間がとれなくて。税理士にお願いしていなくて、自分で全部やっていたので遅れてしまったわけですよ」
ヨーロッパから帰国した茂木健一郎氏は2009年11月10日、成田空港内で、TBSのインタビューに淡々とこう答えた。
「自分でできるだろう」と税理士つけず
とはいえ、所得の申告漏れがあったのは、かなりの巨額だ。ベストセラー本の印税やテレビ出演料、講演料などで、2006~08年までに計約4億円分の確定申告をしていなかったというのだ。報道によると、無申告加算税を含む追徴税額は、約1億6000万円に上るという。
茂木氏がこの間納税していたのは、ソニーコンピュータサイエンス研究所の上席研究員としての年間約1000万円の給与所得分だけだった。つまり源泉徴収されたものだけということだ。
これだけ巨額の申告なら、税理士に頼むことが考えられる。税務署からは2~3年前に申告を求められていたというが、なぜ3年間も頼まなかったのか。ソニーの広報センターでは、取材に対し、こう説明する。
「茂木は、何十年も自分一人で確定申告してきました。ここ数年、忙しくなって、申告書類が膨大になったものの、自分でできるだろうと軽く考えて、税理士にお願いしなかったということです。そして、書類を徹夜で作ったりしていましたが、あまりに忙しく仕事に追われるようになり、申告できませんでした」
茂木氏自身は、税理士を頼まなかった理由について、知り合いがおらず、頼むひまもなかったと読売新聞の取材に答えている。今後は、税理士をつけるという。
NHKには、「もう応援できない」意見が
確定申告するための領収書についても、茂木健一郎氏は、本とタクシー以外はほとんど残していなかった。本当に申告するつもりがあったのか、疑われてもおかしくないことだ。
これに対し、ソニーの広報センターでは、「経費として認められる部分を税金から除外してもらおうと思わず、免税でなくていいと考えていたからです」と説明する。茂木氏自身も、マスコミの取材に、節税には興味がなかったと述べている。
東京国税局からは2009年8月に申告漏れの指摘を受け、茂木氏は11月までに、無申告分の納税をした。ソニーでは、申告しようと思えばできたことについては否定し、指摘から3か月以内に納税した理由を、「仕事を断ったりして書類作成に最優先で取り組み、こちらからも記録を渡すようにした」と説明している。
茂木氏らのこうした弁明に対し、税理士関係者は、厳しい見方だ。
関西地区のある税理士は、取材に対し、こう話す。
「3年間で4億円というのはとてつもない額で、忙しいからほったらかしにしたというのは言い訳にはならないですよ。しかも、税務署とやり取りし、国税まで乗り込んでおり、悪質ということでしょう。税理士に頼む手立てはあったと思いますね。頭脳とはバランスが悪く、彼の思考はどうかしているのでは」
一方、関東地区の税理士紹介業者は、「知り合いの税理士がいない、ひまがないという相談は、最近よく受けます。有名人についても、意外にラフな人が多いと聞きますよ」と明かす。ただ、4億円を稼ぎながら3年間も無申告のままだったことについては、「なかなかないですね」と疑問を呈している。
茂木氏については、ソニーは期日を守るよう指導するものの、処分は特にないという。NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」への出演も、これまで通り行う。ただ、NHK広報部によると、「もう応援できない」という否定的な反応を含め、11月10日だけで約100件も意見が寄せられたという。