亀井静香郵政・金融担当相は2009年11月10日の閣議後の会見で、郵便局のネットワークの活用法について「北海道の若い男の子と沖縄の女の子が結婚する縁結びをしたっていい」と語り、郵便局を「婚活支援」に利用するアイデアを披露した。さらにパスポート申請の窓口や介護事業の拠点などの利用法をあげ、従来の発想にとらわれない「思い切った事業展開」をしていく意向を改めて示した。
鳩山政権では、亀井担当相の旗振りのもと、郵政事業の大幅な見直しが進められている。政府は10月20日に郵政民営化見直しの基本方針を閣議決定。郵政3事業を統括する日本郵政の経営陣も10月下旬に刷新され、元大蔵事務次官の斎藤次郎氏が新社長に就任した。現在は斎藤社長のもとで新しい経営方針と組織体制の再構築が行われているが、株主である政府の声を代弁する地位にある亀井担当相の影響力は依然として大きい。
「北海道の男の子と沖縄の女の子の縁結びをしたっていい」
亀井担当相は従来から、今後の郵政事業のあり方について「民営化前に戻そうというのではない」とたびたび口にしている。11月10日の会見でも「私自身もいろいろ考えているし、斎藤社長自身もいろいろ大きな夢を描いている」と新規事業の積極的な展開が必要だという見解を示し、その一例として「婚活支援」をあげた。
「北海道から沖縄まで(郵便局の)ネットがあるわけだから、たとえば、北海道の若い男の子と沖縄の女の子が結婚する縁結びをしたっていいでしょ? 田舎の山の中から都会までずっとネットができあがっているのは、郵便局ぐらいのもんですよ。しかも、インターネットのような機械のネットではない。人間のネットなんですよ。そういうものを人間のために使っていくというやり方は、いろいろとあると思うんですよ」
これまでも年金手帳の記帳などに郵便局を活用するアイデアは示していたが、いまブームの「婚活事業」に言及したのは初めてだ。これには、同席していた大塚耕平副大臣も
「婚活の話は、初めて聞きました(笑)」
と驚いていた。
「介護事業の拠点」についても改めて言及
さらに亀井担当相は、パスポートの申請窓口として郵便局を活用することを提案。
「パスポートもわざわざ県庁にいかないといかないでしょ。県庁にいかなくても、最寄りの郵便局で発注を受けるようにすればいいと思うんだよ。郵便局のネットを活用することは、日本のパワーをうーんとでかくすると思いますね」
と持論を展開した。過去の講演で口にした「介護事業の拠点」としての郵便局の活用についても改めて言及し、
「介護事業自体が完全に行き詰まり、見直しをやらなければいけないなかで、郵便局の全国ネットを地域の介護に使っていくということは、一番現実的な方法だと思いますよ」
と自信満々に話した。
このように亀井担当相の口からはポンポンといろんなアイデアが飛び出してくる。だが、実際に新規事業を展開するとなると、人材資源や費用対効果の点から課題も大きい。また政府全額出資の特殊な株式会社である日本郵政グループが、すでに民間が手掛けているビジネスに参入することは民業圧迫につながるのではないかという懸念もある。しかしそのような疑問は、いまの亀井担当相の脳裏にはこれっぽっちもないようだ。