不況の影響で、学習塾の料金値下げが広がり、地方でとりわけ目立っている。「家庭の負担を減らすため」として、中には半値にまでするところも現れた。「高校全入」によって起きている「塾離れ」をなんとかしのごうという狙いもあるらしい。
料金の値下げを先駆けて行ったのは、愛知県・静岡県などで展開する佐鳴予備校(東京新宿区)だ。2009年3月、一部の地域では授業料を2~5割下げている。
5教科2万3900円を1万2000円にする例も
具体的には、小学校4年生で9300円が4400円に、5年生は1万4625円が9980円にした。中学3年生の場合も、5教科2万3900円のところを1万2000円とおよそ半額に変えた。広報は「景気悪化による家庭の負担を減らすために企画した。好評を得ている」と手応えを語る。
全教研(福岡市)も同時期、一部の授業で料金を1~2割安くし、中学生向け講座のバリエーションを増やした。たとえば、メーンとなる5教科(1万9980円)、3教科(1万6800円)にくわえて、中1、中2向けに英数コース(1万3650円)を新設したという。営業推進部は「授業選択の幅を広げ、塾に入りやすいようにした」と説明する。
鴎州塾(広島市)も「値下げの額が一律に決まっているわけではないが、全社的に取り組んでいる」と話している。秀英予備校(静岡市)では、春・夏にある講習を無料とするプランを取り入れたのが、話題になった。
一方、城南進学研究社(川崎市)の運営する個別指導「Covez」が2008年11月にはじめた「成績保障制度」。これは、公立中学生の定期テスト「+25点保証システム」をうたい、学校の定期試験54点以下の生徒を一定期間以内に、25点以上上乗せすることを保証するというユニークな制度だ。到達できなかった際は、授業料を一部免除するという。
「入塾のタイミングが後ろ倒しになっている」
このように、塾業界が料金の値下げに向かっているのはなぜか。全国私塾情報センターの中田未知之さんは、「これは、とくに地方で見られる傾向です」として、その理由を次のように話す。
「一つには、地方の消費冷え込みに対応するためです。もう一つには、ここ数年、学力『中間層』の塾離れが顕著だからです。事実上高校全入時代となった今、学校を選ばなければどこでも入れるようになってしまった。ただ、この層が塾にとってはボリュームゾーンなので、各社とも彼らを呼びこもうと、値下げで対応したり、あるいは差別化をはかったりしているわけです」
実際、ある地方の塾関係者は「近年、入塾のタイミングが後ろ倒しになっている」と明かす。首都圏では相変わらず中学受験が盛んだが、一方、地方では高校受験が活発だ。高校受験をターゲットにしている生徒は小学校4、5年時に入塾していたのが、今では小学校6年生かその後になっているという。料金値下げをすることで、彼らを早くに入塾させ、囲い込みたいという狙いがあるようだ。