大手信託銀行の住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスが、2011年春をめどに経営統合する方針を固めた。両行の統合計画は金融再編劇の中で浮かんでは消え、「10年来の恋人」と呼ばれてきた。住信が主導権を握るのを嫌った中央三井が引く形で頓挫してきたが、08秋以降の金融危機で経営環境が急速に悪化したことで背中を押された形だ。
業界では「多角化を進めてきた住信の実力者、高橋温会長の力が弱まり、本業の信託業務に軸足を移すようになった結果」との見方も出ている。住信と中央三井の経営統合計画は00年頃からささやかれ、一時は発表間際までいったとされる。
07年5月にいったんは幕引き
しかし中央三井が住宅ローンなどのリテール業務への集中を進め、効率化に軸足を置いた経営を志向するのに対し、住信は消費者金融アイフルとの関係強化や、東京の第二地銀・八千代銀行との資本提携に動くなど、メガバンクの向こうを張った多角化を模索。路線の違いが表面化し、中央三井の田辺和夫社長は07年5月の決算会見で、「経営方針が違いすぎる。(統合は)ないと思う」と断言し、いったんは幕引きとなった。
しかし、08年秋来の金融危機で、中央三井は保有株の下落から多額の損失を計上し、09年3月期連結決算は920億円の当期赤字に転落した。約2000億円の残高がある公的資金の返済が遅れ、国が持っていた優先株が8月に普通株に転換。国が議決権の約30%を保有する筆頭株主になった。
一方の住信。主力行として関与しているアイフルが経営危機に陥り、私的整理の一種である「事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)」の申請に追い込まれるなど、多角化路線が成功したとは言い難い。このため、業務拡大の陣頭指揮を執ってきた実力会長の高橋温氏への逆風が強まり、本業の信託業務に回帰する勢力が台頭、中央三井との「復縁」に動いたとの見方が出ている。