金を欲しい人が口座番号とその理由を書き込むサイトが登場し、話題となっている。サイトには遊び半分と思われる書き込みもあるが、中には本気とも取れる内容もあった。一体どんなものか。
「金くれ」という名称で、2009年10月20日に開設され、書き込みは現在、900件を超えている。使い方は単純で、「金が欲しい」という人が「口座番号」「メッセージ」「金貰ったらやること」を書き込むというものだ。あとは、金を渡したいという人が、公開されている口座番号に振り込むのを待つという仕組みとなっている。
「口座番号は、隠匿すべき個人情報であると考えていません」
「メッセージ」の欄には、遊び半分と思われる書き込み――お小遣いが欲しい、面白そうなので参加した、びっくりさせてほしい――もあるが、中には本気とも取れる内容――病気、失業、新規事業のために資金が必要だという人もいる。たとえば、飲食店を開きたいので無利子融資か寄付をしてほしい、ネットビジネスを新たに始めたい、事業の失敗による生活苦などとある。
サイト開設の経緯について、運営者にメールで取材を申し込んだものの、返信はなかった。ただ、運営者のブログには、産経新聞の取材に答えた際のやりとりが記載されていた。それによれば、本人が金銭的に苦しかった時期にミニブログ「Twitter」に窮状を書き込んで、人から支援を受けたことがあったらしい。この体験を多くの人と共有しようとサイトは開設されたという。
一方、セキュリティに関しては、「口座番号は、特に隠匿すべき個人情報であると考えていません」としている。フリーソフトウェア制作のために、支援や寄付を募って口座番号が公開されていることがあり、このサイトもこれと同じやり方ということらしい。また、承諾なく振り込む「押し貸し」の問題については、「返さず使ってしまえばいいだけのことで、それもリスクにならないと思います」と書いて、こう続けている。
「ただし、その辺りのリテラシーが広く世間に広まっているかというと、それはそうではないというのはもちろん承知しています。現に押し貸しで『被害』が発生しているわけなので。ですが、そこのところまでは知ったことではないというのがスタンスです」
「振り込まれる際、本名が出てしまうのは心配」
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、以前にも、「2ちゃんねる」上で金の貸し借りに関するスレッドが立ち上がり、問題となったことがあった、と話す。
ただし、「2ちゃんねる」上では勧誘に対して直接メールでやりとりする場合がほとんどで、「金くれ」のように、ネット上に口座番号が記載されている例はなかった、という。そのため、井上さんは利用に「十分な注意が必要でしょう」と指摘する。
「『金くれ』用に口座を開設しているにしろ、振り込みの際、本名が出てしまうのが心配です。振り込め詐欺やヤフオクの取り込み詐欺、押し貸しのトラブルへと発展する可能性も否めません」
そのうえで、井上さんは「真面目に貸す人はいないわけではないと思いますが、それでも個人情報をさらすリスクは高いように思います。サイト自体のセキュリティ強化も必要だと思います」と話している。