中古別荘が値下がりし、土地と建物付きで300万円台という格安物件もたくさん出ている。不景気で全国的に相場が下がっていて、人気の高い別荘地も例外ではなく、インターネットオークションでも盛んに売買されている。
300万円台の中古別荘は今やそう珍しくはないようだ。那須塩原市の3Kの別荘(土地367平方メートル付き)が390万円、栃木県足利市の4DK(476平方メートル)が360万円、長野県佐久市のワンルーム(330平方メートル)は350万円、といった具合。
「避暑地用は減り、最近は家庭菜園や趣味のため」
これらの物件を販売している日本マウント(東京都品川区)によると、所有者が高齢化して利用する機会が減り、家族も使わないので処分するケースが増えている。別荘の管理費は年間数万から、マンションのように数十万円かかることもあり、持っているだけでも負担になるからだ。
格安物件が増えたため、別荘に対する敷居が下がり、客層が変わってきている。
「避暑地用は減り、最近は家庭菜園や趣味のためというように、目的があって購入する人が増えています。近い将来に定住を考えている50歳代のお客様も多いです。若い人は田舎暮らしをしてみたいと定住目的で購入します。今の時代に新築で別荘を建てるという人は少なく、格安中古物件に人気が集まっています。バブルの頃に数億円かけて建てられた物件を1億円未満で狙っている人もいます」
同社の業務担当者はこう話す。
別荘地、中古別荘を販売するバイタル(東京都港区)の担当者は、
「こういう時代(不景気)だから、人気の高い別荘地でも全体的に値段が下がってきて、売買が盛んになっています」
といっている。
浅間山を望む群馬県嬬恋村の別荘(土地667平方メートル付き)を395万円で、長野県富士見町の吹き抜けタイプ(同823平方メートル)を430万円で、伊豆大川の海を望む東伊豆町の別荘(同325平方メートル)を350万円で、伊豆市の温泉付き別荘(同1061平方メートル)を580万円で販売している。
官公庁オークション、不動産の出品が増加
ネットオークションでも中古別荘を扱っている。なかでも格安なのがヤフーの官公庁オークション(インターネット公売)で、税金滞納者から差し押さえた別荘敷地を公売している。別荘用土地の入札開始額が100万円台からという設定もある。
ヤフーの広報担当者は、
「ネット公売の出品自体が増えていて、そのなかでも別荘を含め不動産はかなり多くなっています」
といい、2009年10月28日現在で348件出品されている。
静岡県伊東市の236平方メートルの別荘敷地の入札開始額は102万円、新潟県南魚沼郡の509平方メートルの別荘地が117万円となっているほか、100万台からスタートする物件が複数ある。参加申し込みは締め切られ、入札は11月2日まで。
ネット公売では不動産の出品が年々増えている。スタートした04年は0件、05年153件、06年354件、07年710件、08年1007件だ。年8回行い、09年は5回目までで662件と、前年を上回るペースとなっている。
4カ所の別荘敷地を出品している長野市財務部収納課の担当者は、
「景気低迷でどの市町村も売れる物は売っていくという考え方にシフトし、(滞納者の財産の)処分に力を入れています。今後も(別荘が)出てくると考えられます」
と話している。
国税庁の調べでは、08年度に発生した滞納総額は8988億円で、前年度より163億円増加した。東京国税局は07年にネット公売を始め、年々、出品が増えている。同局広報担当者によると、差し押さえた物件のほか、「税金を納められないので別荘で物納したい」というケースもあり、格安別荘の穴場になっている。