2010年2月の長崎県知事選に、東京地検OBで名城大教授の郷原信郎氏(54)が民主党から非公式に出馬の打診を受けていることが分かった。知事選では、プロレスラーで元参院議員の大仁田厚氏(52)が意欲を示しており、自民推薦現職との三つどもえになる可能性が出てきた。
2010年2月4日告示、同21日投開票の長崎県知事選が、乱戦模様になってきた。
「出馬の可能性は限りなく低い」
スポーツ紙が大仁田厚氏の出馬の動きをすでに報じているが、ここに来て民主党から郷原信郎氏の出馬が取りざたされているのだ。
郷原氏は、島根県出身だが、長崎地検の次席検事時代に大がかりな違法献金事件を手がけたことがある。自民党長崎県連にゼネコンから裏で金が流れているのが2002年に発覚した。郷原氏は、この事件の指揮を執り、当時の県連幹事長や事務局長が逮捕される騒ぎまでに発展した。
事件は、地方の検察が手がけた異例のケースとして、大きな話題になっている。
郷原氏に白羽の矢が立ったとすれば、こうした経歴を買われてのことらしい。また、民主党の小沢一郎幹事長の秘書が逮捕されたときに異例の検察批判を展開しており、同党が擁立しやすい立場にもある。
民主党長崎県連の渡邊敏勝幹事長は2009年10月30日、取材に対し、郷原氏が知事選候補の対象の一人に入っていることを認めた。ただ、地元で県議ら3人が同党に推薦願を出し、ほかの人にも当たっている。現在は、同県選出の国会議員8人に候補の一本化をお願いしている最中で、郷原氏には正式に打診していないという。しかし、早ければ11月5日にも結論を出したいとしている。
そこで、郷原氏に取材すると、法律事務所の秘書を通じて、「知事選への出馬の可能性は限りなく低い」との答えが返ってきた。
正式な打診があった場合の含みは残す
その理由として、総務省顧問に就任直後であることや選挙準備の期間が短すぎることを挙げている。ただ、郷原信郎氏側は、民主党かどうかは明かさなかったものの、長崎県知事選でいくつか打診を受けていることは認めた。そして、「長崎への思い入れはありますので、何らかの形で貢献したい気持ちはある」と、正式な打診があった場合の含みを残した。
過去には、大阪府の橋下徹知事が、「2万%ない」と断言しながら、出馬したケースがある。なんらかの状況が整えば、出馬の余地はありそうだ。
一方、スポーツ紙が出馬の動きを報じた大仁田厚氏は、公式ブログの2009年10月20日付エントリーで、記事見出しの写真を掲げて、意欲をほのめかしている。
それによると、3年前に父親を亡くしてから、故郷の長崎に帰るようになり、地元の友人らとふれあう中で、地方の問題点を意識するようになった。メディアの取材で、長崎中を歩き回ったともいい、ブログでも現在まで、地元の人たちと交流していることをアピールしている。これまでのパフォーマンスを捨てて謙虚に出馬について考えるとしているものの、着々と準備を進めているようだ。
知事選では、自民党推薦現職の金子原二郎氏(65)が4選出馬するかが注目されている。まだ、出馬表明していないが意欲をみせており、自民党関係者によると、12月議会で正式に出馬表明する見通しだ。
総選挙では、民主党が4つの小選挙区すべてで勝利を手中にしているだけに、もし郷原氏が知事選に出馬すれば台風の目になりそうだ。