発足1か月半の民主党政権に対し、経済政策に対して批判的な声が増えてきた。週刊誌などが批判的なのは当然としても、財界からも、政権の手腕を疑問視する声が強まっている様子だ。特に、日本経済新聞は1面に掲載の連載記事で、「頭脳なき初航海」と、異例ともいえる厳しい批判をしている。文字通り「脳なし」だと言わんばかりだ。
鳩山政権の経済政策をめぐっては、亀井静香金融相の「モラトリアム」発言が波紋を呼んだほか、藤井裕久財務相が「円高容認」とも取れる発言をして火消しに追われた。
10月の月例経済報告でも大した議論せず
さらに、メンバーに京セラの稲盛和夫名誉会長を迎えて鳴り物入りでスタートした行政刷新会議も、「事業仕分け」を担当する作業チームに新人議員が多数含まれていたことから民主党の小沢一郎幹事長が反発。人選を一新して「仕切り直し」をする羽目になった。
このように、混乱が目立ち始めた中で、日本経済新聞が連載記事で、激烈な鳩山政権批判を繰り広げている。「政権」と題した1面に掲載されている連載では、「官房報償費」こと「内閣機密費」の問題や、民主党と労組との関係など、新政権をめぐる動向を連日取り上げており、2009年10月30日の回では、新政権の経済政策に焦点を当てた。見出しは
「頭脳なき初航海」「針路見えず迷走の芽」
という刺激的なもので、新政権の経済政策に関する無関心ぶりを問題視している。その一例として、鳩山政権になって初めて出された10月の月例経済報告でも、前政権の基調判断を踏襲したことや、発表に先立って行われた関係閣僚会議でも、大した議論は行われたかったことを指摘している。確かに他紙を見ても、
「今回の会議でも、詳しい内容は官僚が説明。質疑では、亀井静香金融相が白川氏(白川方明・日銀総裁)に海外経済の見通しについて尋ねた程度だったという」(朝日新聞)
と、会合での議論が活発ではなかったのは間違いないようだ。
「政府の外にいる『知』を生かした形跡も見えない」
さらに連載では、中曽根政権下では「土光臨調」が行政改革で活躍したことなどを引き合いに、として、日本の歴代政権や現在の海外のトップには、シンクタンクやブレーンが存在していた(いる)ことを指摘。
「かつての政権は頭脳(ブレーン)のない案山子ではなかった」
「『脱官僚依存』の自縄自縛で官僚機構をシンクタンクとして使えず、政府の外にいる『知』を生かした形跡も表には見えない」
と、現状の政権が文字通り「脳なし」だと言わんばかりの強い調子で批判を繰り広げている。さらに連載スペースの左端には、マキャベリの「君主論」から
「君主の頭脳がどの程度のものかを推測する場合、まず彼の近辺にいる人間を見るのがよい」
という言葉を引用。政権を皮肉っている。
記事では財界で新政権に対する不安感が広がっていることを強調するが、「政権に対する評価を下すには時期尚早」との見方出ている。
元朝日新聞編集委員で財界の取材経験が長いジャーナリストの阿部和義さんは、
「確かに、民主党の経済政策には新しいものが見えません。『二番底』のリスクに対して、どのような対策を打ち出すのかも分かりません」
と指摘する一方、
「前原国交相が直面しているような『自民党政権が食い散らかしたものを何とかしないといけない』という段階なので、今の民主党にそこまで(経済対策を)求めるのは『無いものねだり』。米国でも、政権交代後100日ぐらいは『ハネムーン期間』と言います。年末~年明けぐらいまでは見守る必要があるのでは」
と話している。