税収不足から酒税の引き上げが注目されている。税制改正については現在、政府税制調査会で検討しているが、「酒税やたばこ税はまだ検討しておらず、時間的に厳しい」(民主党・財政金融担当)こともあり、2010年度の実施は難しいとされている。ただ、鳩山首相は増税に前向きなようで、業界は早くも「反対」を訴えている。
酒税の引き上げの「ターゲット」の一つが、ビールや発泡酒よりも適用税率が低い「第3のビール」だ。消費者の節約志向の高まりで大ヒットしていて、08年には発泡酒と第3のビールの売上げは逆転した。
鳩山首相が「増税検討」を指示
酒税法によると、ビールはアルコール度数に関係なく、1キロリットルあたり22万円の「定額」になっている。同じように、発泡酒は13万4250円(麦芽比率25%未満)、「第3のビール」は8万円と低く設定されている。「安価」が売りものの「第3のビール」だが、ビール類の価格の差は、そのまま税率の差といってもいい。
ビール業界はこれまで、ビール酒税の減税を強く求めてきており、10年度の税制改正要望も「ビール、発泡酒の減税」が柱。そのうえで、「第3のビール」の増税を阻止する考えを基本としている。
鳩山首相が酒税とたばこ税について「健康への負荷を踏まえた課税」の検討を政府税制調査会に指示したことから、危機感を抱いたビール業界は10月23日、財務省で開かれた「政策会議」で、先手を打って「増税反対」を訴えた。
「環境」と「健康」を重視した税率に変わる?
自民政権下では、酒税やたばこ税は税収不足を補うための、いわば「打ち出の小槌」だった。簡単に言えば、消費税の引き上げでは国民の反発が大きいため、「取りやすい」ところから徴収するということだ。それでは自民政権となにも変わらない。
民主党は「間接税については『環境』と『健康』を重視した税率にすることが基本。健康によければ税率を下げるし、悪ければ引き上げる。つまり、増税が目的ではない」と、自民政権との違いを説明する。
それを具体化する案が、酒税の「度数課税」だ。度数課税はアルコール度数の高いほど税率が上がる。現行の酒税では一部適用していて、たとえば焼酎類ではアルコール度数が20度(1キロリットルあたり20万円)を超えると、1度ごとに1万円が加算される仕組みになっている。ただし、ビール類には適用されていない。
見直しとなると、まったく新たな税体系になるわけだ。
アルコール度数で税率が決まるようになると、ウイスキーなどは税率が上がる可能性があるし、同じビールでも銘柄によって税率が異なることもあり得る。
ビール会社で構成する発泡酒の税制を考える会は、「度数課税を導入するのであれば、お酒をジャンルで分けるようなことなく、公平に課税してほしい」と要望する。