覚せい剤取締法違反の罪に問われている女優の酒井法子被告(38)は、2009年10月26日に東京地裁で開かれた初公判で起訴事実を全面的に認めた。テレビ各局は、通常の番組を拡大して速報。芸能界や法曹界から多くのコメンテーターが出演したが、「奥さんとしても妻としても資格のない人」とか「検察の『簡単には(裁判所に)執行猶予を出させない』という姿勢が表れている」といった、被告に厳しい見方も出た。
初公判では、20席の一般向け傍聴席に対して、6615人が、裁判所近くの日比谷公園に列を作った。使用された法廷が、他の「大事件」と比べて小さかったこともあって、競争率は過去最高の330.75倍を記録した。
「介護の勉強をしていきたい」
公判では、酒井被告は起訴内容を全面的に認めた上で、夫の高相祐一被告(41)と離婚する意向を涙ながらに表明。今後については、「介護の勉強をしていきたい」などと述べた。
初公判をめぐっては、テレビ各局も特別体制で報じ、様々なコメンテーターが登場した。その中では、酒井被告に対して厳しい見方をするものも少なくなかった。
各識者のコメントの中で共通しているのが、「酒井被告が犯行の様子を正直に話している」といった趣旨のものだ。
例えばTBSの「ひるおび!」では、覚せい剤の入手経路について、酒井被告と高相被告との証言が大筋で一致していることから、元麻薬取締官の浦上厚さんが、
「(酒井被告は)今、うそをつけない気持ちになっている」
とコメント。元警視庁捜査1課長の田宮榮一さんも、
「だんだん、真実に近づいてきた。『(覚せい剤を)使わないと疲れてしょうがない』といったような禁断症状ですね」
と、禁断症状についても率直に証言していることを指摘。八代英輝弁護士も、
「正直に語っている、という印象がある」
と、これに同調した。各コメンテーターの評価がおおむね一致したTBSに対して、コメンテーターの間の温度差が浮き彫りになったのがテレビ朝日の「ワイド!スクランブル」だ。
「奥さんとしても妻としても資格のない人。腹立たしい」
検察出身の大澤孝征弁護士は、薬物依存から抜け出すためには、高相被告との関係を断ち切ることが重要だと主張。その上で、酒井被告が公判の中で高相被告と離婚することを明言しなかったことについて、
「『こういう人とやっていくつもりはない』と言ったほうが。本当は良かったのかも知れない。その辺があいまいと受け取られる余地がある」
と、酒井被告に不利になる可能性があることを指摘。
さらに、
「検察による被告人質問が非常に長かった。おそらく、弁護側よりも長かったと思います。これは、『簡単には(裁判所に)執行猶予は出させない』という意志の表れでしょう。苛め抜いて、厳しい追及をしている最中。これは被告人のためにもなるはずです」
と、「必ずしも執行猶予が付くわけではない」との見解を示した。
一方、「酒井法子 孤独なうさぎ」(双葉社)著者の渡邊裕二さんは、酒井被告が「介護の仕事をしたい」と証言したことについて、
「現在、そう思っているだけで、日にちがたつにつれて、芸能界への復帰を、もしかしたら考え出してくるかもしれない。芸能関連でファッションの仕事もしていたので、(ファッションの)プロデュースをしてもいいだろうし、間口は広い」
と、芸能関連の仕事に復帰することについて楽観的だ。
また、よみうりテレビ(日本テレビ系)の「ミヤネ屋」では、うつみ宮土理さんが
「妻だったら(夫が覚せい剤を使っているのを知ったら)『やめなさい!』と驚くでしょう。覚せい剤は高価なはずなので、『いくらくらいかかるの?』って(聞くはず)。被告は経済観念がない。子どものことも考えていない。奥さんとしても妻としても資格のない人。腹立たしい」
と、酒井被告の「家庭人」としての資質に疑問を呈していた。
公判では、検察側が懲役1年6か月を求刑し、即日結審。判決は11月9日に言い渡されることが決まっている。