虫歯菌や歯周病菌を取り除いてくれる洗口液が、注目を集めている。液体を口に含んで10秒間すすぐだけで強力な殺菌効果があるという。ただ、臨床報告がまだないことなどから、歯科医師の間では賛否ともにあり、「治療の基本となる歯磨きをおろそかにしないでほしい」とも話している。
野口歯科医学研究所(栃木県小山市)が2005年に開発した口腔機能水「パーフェクトペリオ」。この液体は、炭酸水と食塩水を電気分解することで、白血球と同じ殺菌成分のある「次亜塩素酸」を精製している。次亜塩素酸の働きによって、ほとんどの歯周病菌や虫歯菌が殺菌されるというものだ。殺菌作用は、口臭の予防効果にも期待される。
500ミリリットル入りで、2000円から3000円
パーフェクトペリオを用いた治療では、歯周病菌がある部位――歯周ポケットに殺菌水を直接噴射して、歯石を除去している。また、ほかの洗口液よりも殺菌効果があるといい、液体を口に含んで10秒間すすぐだけで、日頃のオーラルケアとしても利用できる。現在では同研究所のクリニック以外でも、全国およそ200か所の歯科医院で購入することが可能だ。500ミリリットル入りで、2000円から3000円で売られている。
同研究所によれば、パーフェクトペリオは、日本食品分析センターによるラット・ウサギを用いた毒性実験では異常や死亡例は見られなく、「優良な評価」を得ているという。東京医科歯科大学による「基礎研究」でも殺菌効果が認められており、クリニックでも治療が行われていることからも、今のところ安全性には問題ないと見られる。
だが、臨床実験――安全性・有用性を確かめるために行われる治療をかねた試験のこと――による調査報告がまだないこと、研究自体もまだまだ少ないことから、歯科医の中では、使用については賛否両論となっている。ノア デンタルクリニック(岐阜県岐阜)の渡辺徹也院長は「私は、基礎研究だけで判断ができるかといえば、難しいと思います。副作用を含めた安全性について、まだまだ調査が必要でしょう」と慎重な姿勢だ。
なお、「パーフェクトペリオ」は2009年9月、TBSの番組が取り上げた頃から注目されはじめていた。また、毎日コミュニケーションが運営する「マイコミジャーナル」が10月20日に取り上げたところ、「はてなブックマーク」には1000件以上がブックマークされ、関心事に。コメントには、使ってみたい、大丈夫なのか、本当なのか、などと書き込まれていた。
歯周病治療は歯磨きが基本
東海市民病院分院「歯科口腔外科」の湯浅秀道先生によれば、「パーフェクトペリオ」のような機能水を商用化する動きが、ここ最近、進んでいる。機能水とは、水に有用な成分を付加したもののうち、科学的な根拠のあるもの、とされている。湯浅先生は、機能水の研究も進んでおり期待感もあるのだが、有用性には賛否ともにある、という。
そのうえで、湯浅先生は、「機能水がよいものであると仮定するとして、予防に使う分には悪くはないでしょう」とする。だが、湯浅先生はこれを治療に用いるのにはやや懐疑的な立場で、歯周病「治療」の基本は、「歯磨きが有効とされている」と指摘する。
「歯が清潔に保たれていなくては結局、その後の治療の効果が薄れるからです。そもそも歯周病は、菌がなくなれば、快方に向かいます。治りが悪いのは、磨きが足りないか、磨きにくい場所のどちらか。これらが改善できれば、歯周病の進行はとまるのです。ですから、歯周病に関しては、薬剤の効果は少ないとも言われています」
そのため、湯浅先生は「(パーフェクトペリオを)使用してみるのも一つの手ですが、これさえあれば、あとは歯磨きをしなくても済む、というわけではありません。歯磨きをおろそかにしないでほしい」と話していた。