2008年秋のリーマン・ショック後に不振が顕著になった百貨店業界が出口の見えないぬかるみに足を取られている。「ユニクロ」に代表される専門店への顧客流出や少子・高齢化といった構造的な要因による地盤沈下が続く中で、百貨店業界の行く末を決める「2011年大阪の陣」が注目されている。
大手百貨店のうち、2月期決算を採用している高島屋、そごう・西武、傘下に大丸と松坂屋を持つJフロントリテイリングの3社の8月中間決算は、全社がそろって大幅な減収減益だった。勢い、経営者の反応には強い危機感がにじむ。
「今の状況が3年続いたら完全にお手上げ」
Jフロントの奥田務社長は「今の状況が3年続いたら完全にお手上げだが、いつ出口が見えるのかも分からない。急激な消費の冷え込みもあるが、それ以上に競争激化が激しい」と嘆き、他社への対抗上、価格政策に踏み込まざるを得ない実情に苦悩の表情を浮かべた。
大丸の中間売上高は前年同期比10.4%減の2036億円、営業利益は同77.4%減の11億円。大阪梅田店のテナントに紳士服量販チェーンのはるやま商事を入れるなど、業界の常識をくつがえす試みを続ける同社にしてこの状況。奥田社長は「高額商品は2~3割減の厳しい状況で、量的には小さくせざるを得ない」と述べた。
高島屋の鈴木弘治社長も「黒字経営を維持するギリギリの状況」と現状を分析する。同社の中間売上高は同12.2%減の4288億円、営業利益は同63%減の52億円。同社も百貨店の集客力を高めるため、新宿店が入居するショッピングセンター内のテナントにカジュアル衣料の「ユニクロ」を誘致するなど新たな試みを始めている。
大丸は心斎橋店北館をいち早く開業
百貨店業界では「2011年・大阪の陣」が各社の帰趨を決めるという見方が強い。大丸や高島屋に加え、阪急百貨店、三越・伊勢丹グループなど主要百貨店が軒並み、数十億~数百億円を投資した大改装を続けており、来春早々には日本最大の百貨店密集地での顧客争奪が始まるからだ。
大丸は2009年10月14日に心斎橋店北館(大阪市)をいち早く開業させた。売り場の6割以上を25~34歳の「アラウンド30」や18~24歳の「ヤング」向けにし、従来は百貨店で買い物しなかった層を新たに取り込む考えで、同社は「新百貨店モデル」と位置付ける。増床工事を進める高島屋も従来になかった新しいブランドの誘致などを進めており、「『ルイ・ヴィトン』を初め、世界の主要ブランドを最初に日本に根付かせた老舗百貨店としての底力を示したい」(幹部)と意気込む。
景気の「二番底」の可能性も指摘される中、百貨店業界の暗中模索は本当の知恵と体力が問われる段階に突入している。