女性誌の間で「付録合戦」が加熱する中で、最近は男性向け雑誌にも波及してきた。女性誌の付録はポーチやトートバッグといった袋物が多いのに対し、男性誌は電卓付きマウスパッド、ミニスピーカー、ポケットライトといった具合に、豪華でバラエティに富んでいる。
通常よりも4万部多く売れた
男性向け情報誌「DIME」19号(小学館、2009年9月15日発売)の付録は、藤子・F・不二雄氏の描くドラえもんやオバケのQ太郎などのイラストが入ったマウスパッドだった。サイドには電卓がついている。通常価格400円のところ19号は580円に値上げしたが、
「通常号よりも4万部多く売れました」
と、水野麻紀子編集長は話す。
同誌はこれまでにもアイポッド用ミニスピーカーやMicroSD・SDカードリーダーなどの付録をつけている。
「付録がつくと売れ行きはかなりよくなります。読者の8割が男性なので、デジタル関連の付録が好評です」
男性読者の多い専門誌にも付録旋風が吹きまくっている。
パソコン情報誌「PCfan」(毎日コミュニケーションズ)は、液晶画面保護フィルムやMicroSD・USB変換アダプタなどの付録を09年5月号からほぼ毎号つけるようにした。10月2日に発売した11月号には、USBなどのコネクタに取り付ける9種類15個のキャップがセットになっている。ふだん使わないコネクタにキャップを装着しておけば、端子にホコリがかぶるのを防げる。
陶山佳秀編集長は付録をつける理由について、
「ウエブで情報が入手できるようになり、それと差別化するために紙媒体だからできることとしてやっています」
と説明。実売にも結びついているそうだ。
アウトドア雑誌「BE-PAL」09年7月号(小学館、6月10日発売)の創刊28年記念付録は、LEDのポケットライトだった。「ちょっと得した気分です」「コンパクト懐中電灯無かったのでラッキーでした」と個人のブログに書き込まれている。
「男性誌も付録合戦になったら大変」
もっとも、男性誌の場合、女性誌ほど付録合戦はヒートアップしていないようだ。
大手出版社の販売担当者は、
「女性誌と違って、男性誌は付録がついているからといって売れるものではないからです。女性の場合、ポーチや袋がいくつあってもいいと思うから売れますが、袋を複数欲しがる男性は少なく、かといって読者にとって魅力的で低コストの付録はほかにそんなにない。ただでさえ女性誌よりはるかに部数が少ない男性誌に付録をつけると、1個あたりの単価は高くなります。男性誌も付録合戦になったら大変なので、ニーズがないなら他社を刺激することはしたくないというのが本音です」
と明かす。
前出の「DIME」水野編集長も、
「既存読者へのサービス、新規読者の取り込みを狙って年に数回、付録をつけていますが、毎号つけることは考えていません。自分で自分の首を絞めることになりますから」
といっている。