酒井法子被告を守るため、前の弁護士にウソをつき通すことを勧められた――。夫の高相祐一被告が覚せい剤事件の初公判でこう証言したことに対し、弁護士側は、J-CASTニュースの取材に対し、「事実ではございません」と完全否定した。これはどういうことなのか。
本当だとしたら、弁護士の威信が揺るぎかねない大問題だ。
新聞各紙によると、高相祐一被告(41)から問題の証言が出たのは、2009年10月21日の初公判で、現在の弁護士が被告人質問をしているときだった。
「青山公園で使ったことにして下さい」
その証言によると、高相被告は逮捕直後、酒井法子被告(38)の弁護もしている前の弁護士に、覚せい剤の使用場所が東京・青山公園というのはウソで、本当は南青山の自宅マンションだったと告げた。ところが、この弁護士は、高相被告にこう言ったというのだ。
「それはまずい。青山公園で使ったことにして下さい」
高相被告が当初ウソをついていたのは、「法子の逮捕前だったので、隠そうと」したためだったという。自宅マンションの家宅捜索などで、酒井被告の覚せい剤使用がばれるのを防ごうとしたわけだ。そして、弁護士からもウソをつき通すように勧められたため、起訴するまで青山公園で使用したことにしていた。しかし、弁護士が変わり、現在の弁護士に同じことを告げたところ、「正直に言った方がいい」と言われた。
そして、公判では、高相被告は、起訴事実の一部を否認。覚せい剤の使用場所が、青山公園から自宅マンションに訴因変更された。
こうした衝撃証言に対し、司法関係者からは厳しい声が出ている。
東京地検出身の大澤孝征弁護士は、22日放送のTBS系「朝ズバッ!」で、これが真実なら弁護士法違反で、弁護士会からの「懲戒ものだ」と指摘。「不利益なら言わなくてもいいことはあっても、虚偽まで言っていいとは言えない」と憤った。また、元最高検検事の土本武司筑波大名誉教授は、スポーツニッポンの22日付記事で、内容次第では偽証教唆の罪に問われる可能性もあるとコメントしている。
日弁連「すぐに動くことはない」
高相祐一被告の前の弁護人をしていたのは、東京・港区のみやび法律事務所に所属する榊枝真一弁護士。この法律事務所は、酒井法子被告が失踪していたときに手を差し伸べた関係者がいると報じられたことで知られる。
榊枝弁護士は、失踪に関わったとは指摘されていないが、現在も酒井被告の弁護人をしている。こうしたことから、酒井被告をかばおうと高相被告にアドバイスした可能性はあるのだろうか。
法律事務所に取材したところ、榊枝弁護士は外出中だったが、事務所職員は、「『事実ではございません』とマスコミに伝えるよう言われています」と回答した。完全否定だったため、さらに高相被告と実際はどんな話をしたのか聞くと、「詳しいことは、公判中の事件ですので、これ以上のコメントはできません」とのことだった。
一部報道で、高相被告が偽証を強要されたと証言した場合、弁護士の身柄拘束もあるという識者の見方が紹介されたことについて、事務所職員は「事実無根です」と反論した。警察から弁護士法違反の疑いなどで事情聴取されていることもないという。
榊枝弁護士が加入している東京弁護士会の秘書広報課では、高相被告の証言について、「報道があったことを役員は認識していますが、どう対応するのかはまだ決まっていない段階です」と言う。
一方、日弁連の広報課は、「事実かどうかも分かりませんし、判決で確定したわけでもありません。ですから、証言があったからといって、すぐ何か動くということはありません」と話している。