若者の車離れ「自動車ゲーム」が原因 「トヨタ自動車幹部」発言に異論続々

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   若者の車離れが起こっているのは「家庭用ゲーム機がいけない」とトヨタ自動車の幹部が語った、という記事をきっかけに、ネットで議論に発展している。実車のようにリアルに描かれた自動車ゲームを楽しみ、それで満足する若者が増えたため車を買わなくなった、という理屈だが、本当にそれが原因なのだろうか。

   トヨタ幹部の発言は、毎日新聞のニュース・情報サイト「毎日jp」のコラム「憂楽帳」(2009年10月19日)に掲載されている。

「あんなリアルな遊びがあれば車なんか要らない」

本物よりキレイ?YouTubeにアップされた「グランツーリスモ5プロローグ」の画像
本物よりキレイ?YouTubeにアップされた「グランツーリスモ5プロローグ」の画像

   タイトルは「デートカー」。若者が自動車に興味を持たなくなった理由について、

「トヨタ自動車の幹部は『家庭用ゲーム機がいけない。あんなリアルな遊びがあったら、車なんか要らなくなっちゃう』と嘆いた」

と書いている。

   確かに90年代半ばに家庭用ゲーム機「プレイステーション」が登場以降、自動車ゲーム「リッジレーサー」など、3次元で車やコースがリアルに描かれ、まるで実際に運転しているような感覚が味わえるものが増えた。07年12月に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「PS3」用「グランツーリスモ5プロローグ」は自動車ゲーム最高峰の呼び声が高く、オンライン対戦で最大16人レースが楽しめる。ゲーム内で使用できる車種は、フェラーリ、アルファロメオ、日本ではホンダなどの実車を3次元でリアルに再現している。

   こうしたゲームは自動車マニアにも大人気。これから車を買おうとする人達は、ゲームの素晴らしさに満足し、車を買わなくなってしまうのだろうか。SCE広報は、

「車のゲームをきっかけに、実車やモータリゼーションに興味を持つ人がいると聞いています。ゲームはゲームの、実車は実車の楽しみ方があります」

とし、若者の車離れがゲームと関係していることについて首を傾げる。

   もっとも、トヨタ自動車広報は、

「幹部がこうした発言をしたことは承知していないが、車離れがゲームに関係しているというのは初めて聞いた」

といい、関連については否定的だった。ちなみに、現在開かれている「東京モーターショー」で、トヨタはSCEとコラボレーションし、トヨタの「FT-86 Concept」の走りを「PS3」とゲームソフト「グランツーリスモ5」(10年3月発売予定)を使ってシミュレーションで試乗体験できるコーナーを24日から設置する。

「若者が魅力を感じる車がない」ことが真相

   ガリバー自動車研究所の鈴木詳一所長は、

「ゲームに満足して車を買わない人がいるかもしれないが、そういう人達はもともと車を買う意欲が低いのではないか」

と分析する。若者が車を買わなくなっている原因はいくつかあり、平均所得が減るなかで特に収入の低い若年層は車を持つ余裕がなくなっていること。また、ケータイやパソコンに興味を奪われ、ケータイ一つあれば部屋を出ずにほとんど済んでしまうライフスタイルができている、ことなどがあげられるという。

   特に問題なのはメーカーの姿勢だという。

「若者が魅力を感じる新車が出ないため、車から関心が離れてしまった」

というのだ。

   メーカーは売れ筋のミニバンや軽自動車ばかり作り、「デートカー」などと言われたスポーツカーの開発を止めてしまった。魅力ある車というのは発想だけで生まれるものではなく、研究・開発・テストを繰り返して初めて生まれるもの。高いコストが必要なため、大量に売れる物ではないからと、止めてしまった。そのせいで、若者が車に興味を失ったというのだ。

   危機感を募らせたメーカーは、トヨタが伝説のスポーツカー「ハチロク」の復活を発表するなど、燃費性能の高い小型スポーツ車の開発に入っている。今回のモーターショーでも若者狙いの新車が展示されていて、

「そうした新車の中で心をつかむものが出れば、車離れの状況は変わるかもしれません」

と鈴木所長は期待を込めて話している。

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