公園の滑り台でパンチラ撮影をした男女を大阪府警が逮捕したことについて、ネット上では疑問の声がくすぶっている。逮捕でなく注意に留めるべきではなかったかなどだ。府警では、公共の場所であり、見た人に不安や卑わい感を与えたと説明している。
確かに、異様な光景ではあったらしい。
モデル役となった無職の女性(25)は、報道によると、青いミニのワンピースにハイヒールの金髪ギャル。以前は、性風俗店を渡り歩いていた。片や、ビデオカメラを回していたタクシー運転手の男性(38)は、地味な外見の中年だった。
公園の滑り台で「開脚」ポーズ
この不釣り合いの「カップル」を不審に思ったのが、事件現場となった大阪市港区の公園を1人で散歩していた近所の女性だ。大阪府警港署によると、この女性は2009年10月12日午前10時55分ごろ、2人が滑り台でとんでもないことをしているのを見つけた。モデルの女性は、滑り台の一番上に座り、「開脚」のポーズでパンティーをもろに見せていたのだ。タクシー運転手の男性は、その下から熱心にビデオカメラを回し、カメラで写真撮影もしていた。
公園は住宅街にあり、この日は3連休の最終日。公園内には、幼稚園児2、3人とその親がいた。
近所の女性は、「教育上悪い卑わいな行為だ」と同署交番に通報。署員が駆けつけると、2人は撮影を終えていた。が、この女性の証言をもとに任意同行を求め、大阪府迷惑防止条例違反(卑わいな行為の禁止)の疑いが強まったとして逮捕した。同条例の6条5号にある「公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること」に当たるという。2人は大阪地検に身柄送検され、19日現在も拘留中だ。
同署によると、2人は、ネット上のサイトで知り合った。パンチラ撮影が趣味だった男性は、モデルの女性に持ちかけ、女性が合意して1万円のギャラと2000円の交通費を支払っていた。ビデオには、パンティー姿の女性が映っていた。
「通報の女性に不安や卑わい感を与えた」
この事件が実名報道されると、2ちゃんねるやミクシィなどでは、裸になったり、触ったりしていたわけではないなどとして、逮捕に疑問の声が出た。「人気のない場所でやれ」と理解する向きもあるものの、「注意くらいにすりゃいいのに」といった書き込みが出ている。
港署の副署長は、こうした声に対し、次のように説明する。
「公園内にいた親子は特定していませんが、通報の女性に対しては、不安を覚えさせる卑わいなことをしていました。公共の場所で、足を開いてパンツを丸出しにするのはありえません。逮捕したのは、2人に証拠隠滅や逃亡の恐れがあったからです。女の方は、住所不定で、当初は『金をもらっていない』『パンツOKしていない』と否認していました。また、男の方は、大筋を認めていましたが、職業が自称で、犯行の背景も調べる必要がありました」
同署では、近く家宅捜索も行うという。
こうした問題に詳しい奥村徹弁護士は、大阪府警の逮捕にはある程度理解を示す。
「背景には、公然とパンチラをしたり、お尻を触ったりすることはおかしいとする社会通念があり、条例もこのことを禁じています。この事件では、被害者の女性が迷惑だと同意しているとすれば、卑わいな行為に当たります。現場の状況にもよりますが、女性の逮捕には理由があり、男性は認めているといっても女性と共謀しています。ネットで約束していたとしたら、証拠隠滅の恐れから逮捕することもあるでしょう」
無断で女性のお尻をジーンズの上から撮影することは迷惑防止条例違反に当たるとする最高裁の判例があり、この点からも逮捕について争うことは難しいとしている。
ただ、条例上の「人」をモデルの女性と解釈して、違法ではないと一つの主張として争うことはできるという。また、2人を未だに拘留していることに対して、異議を唱える余地はあるとしている。
もっとも、パンチラ撮影を許すには、条例を変えるしか方法がないようだ。