ハコフグの帽子で知られる魚大好きタレントのさかなクン(34)。日本魚類学会で天皇陛下と遭遇し、テレビで目を輝かせた姿が映って話題になっている。そのせいで、過去に人気を集めたコラムも、再び脚光を集めているようだ。
東京海洋大学の講義室に、天皇陛下はにこやかな表情で入ってきた。すると、アップで映し出されたのが、さかなクン。なんと、ネクタイにスーツ姿で席に座っている。トレードマークの帽子はしていたが、いつもの白衣姿ではなかった。そして、目を輝かせながら、陛下の入ってくる方向に顔を向けた…。
さかなクンの帽子は、「皮膚の一部」
これは、フジテレビ系のニュースで流れた2009年10月11日の魚類学会年会のシーンだ。陛下は、ハゼの研究者として知られ、この日は、学会の会員として3年ぶりに出席された。一方、さかなクンは、09年から新学会員となり、初めての出席だった。
同じく魚類に通じたさかなクンと陛下との遭遇は、ネットユーザーにも新鮮な驚きを与えたらしい。気が合いそうなことを表すためか、ニュースの画像をコラージュして、陛下がハコフグの帽子を被っているように見せかけた合成写真まで2ちゃんねるにアップされた。これは、まとめブログに貼り付けられ、はてなブックマークが200ほども付く注目を集めている。
また、2ちゃんでは、さかなクンが帽子を被ったままだったことも話題に。「陛下の前では帽子取れよいくら何でも」との声もあったものの、「それ帽子じゃなくてさかなクン本体w」「ここまでくると清々しいなwww」「ちゃんと正装した付属品に取り替えてんじゃん」と理解する向きもあった。
東京海洋大学の広報担当者は、さかなクンの帽子について、「難しいところですね」。そのうえで、「『皮膚の一部』と公言していますので、やはり取らなかったんだと思います。ネクタイ、スーツ姿はあまりないことで、精一杯礼儀を尽くそうとしたのでしょう」と話している。
「いじめられている君へ 広い海へ出てみよう」
東京海洋大学によると、天皇陛下とさかなクンは席が離れており、講義室では話を交わされなかった。しかし、その後の懇親会には陛下も参加されており、そこでさかなクンとお話しされた可能性もありそうだ。
実は、さかなクン、2006年10月10日の「魚魚(とと)の日」から同大の客員准教授をしている。そして、その肩書きで同12月2日に朝日新聞に掲載したコラムが、陛下との遭遇の一件で再び脚光を浴びているのだ。
コラムのタイトルは、「いじめられている君へ 広い海へ出てみよう」。
そこで、さかなクンは、中学1年のとき、吹奏楽部で一緒だった友人にだれも口をきかなくなったこと、いばっていた先輩が3年になったとたん無視されたことを振り返る。そして、こうしたいじめは、魚の世界と似ているというのだ。
「たとえばメジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。せまい水槽(すいそう)に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃(こうげき)し始めたのです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます」
さかなクンは、こうした体験を踏まえ、いじめが起こる小さな世界に閉じこもることなく、広い空の下、広い海へ出てみることを呼びかけている。
このコラムは、当時も大きな反響を呼び、絵本「さかなのなみだ」が出版され、人気番組「SMAP×SMAP」でも紹介された。現在もサイト記事が閲覧可能で、急激にはてブが伸びて累計1400件以上も付いている。
客員准教授として、さかなクンは、大学のイベントや学園祭で学生に魚の暮らしぶりなどを話している。こうした場でも、人間に通じる、その世界を紹介しているのかもしれない。