秋田県横手市の名物「横手やきそば」が、安くておいしい「B級グルメ」のグランプリを決める大会で1位を獲得した。全国に知られるようになり、休日になると県外からの観光客がたくさん集まって、店はあっという間に満席だ。2位の「八戸せんべい汁」も知名度を一気に上げた。
全国のB級グルメが集う大会「第4回B級ご当地グルメの祭典! B-1グランプリ in YOKOTE」は2009年9月19、20日に秋田県横手市で開催され、2日間で26万7000人が来場した。今回は26団体がエントリーし、地元の横手やきそばがゴールドグランプリ(1位)に初めて選ばれた。
3連休中は福岡や札幌からお客がやってきた
第2次世界大戦直後、屋台のお好み焼き屋で新たなメニューを模索している最中にできたのが始まりだと言われている横手やきそば。400、500円という手ごろな価格とおいしさが市民の間で人気となって次々と店舗が増え、今では市内に50軒以上の店がある。
横手やきそばには、太くてまっすぐな「ゆで麺」を使い、具材にはキャベツと豚挽肉に加えて目玉焼きと福神漬けを添える。ソースは一般的な焼きそばに比べて多めに使い、全体的に汁気が残るのが特徴だ。
横手やきそば店の団体「横手やきそば暖簾(のれん)会」の理事長を務め、「福龍」ほか3店舗を経営する伊藤一男さんは、
「B-1グランプリで1位になってから、これまで以上にお客さんが来るようになりました。9月のシルバーウィークや10月の3連休には2倍以上増え、特に他県のお客が多く、遠いところでは福岡や札幌からも来ていました。本店には30、40席ありますが、満員になって、外で待っていただくほどでした」
といっている。
伊藤さんの経営する3店舗では自前の麺とソースを使っている。以前は土日で1日150食程度だったが、今では300食用意しないと足りない。横手やきそばで使うのは日持ちがしない「ゆで麺」で、作り置きもせいぜい2日が限度。翌朝の開店に間に合うように、閉店後に麺作りに追われるという大忙しの日々が続いている。
また、横手市内にある観光テーマパーク「秋田ふるさと村」には、横手やきそば目当てに訪れる客が増えている。
「施設内にはやきそば店が2店舗入っていますが、いずれも売上げが1.5倍に伸びています。土日はゴールデンウィーク並に混んでいます。これも1位の効果なのでしょうか」
と、店員は驚いている。
「八戸せんべい汁」にも市外、県外からのお客
半世紀以上にわたり、横手市で製麺業を営む林泉堂は、横手ラーメンの通信販売もしている。
「以前は1日に1、2件の注文があれば良い方でしたが、グランプリを取ってから20件も入る日があり、売上げは平均して10倍に伸びています。麺とソースの両方が自前なのが他の通販にはない特徴です」
と、通販担当者はいっている。
麺とソースのセットの基本セットほか、秋田県の高級卵「あやめ卵」や福神漬けが入ったセットも販売も好評だ。
一方、B1グランプリで横手やきそばに破れ、2位だった青森県八戸市の「八戸せんべい汁」にも異変が起きている。
八戸せんべい汁は、肉、魚、野菜、きのこなどでダシを取った汁の中に、南部せんべいを割って入れて食べるというもの。せんべいが適度に柔らかくなり、もちもちとした食感になる。市内では170店舗以上の店で食べられる。
八戸せんべい汁研究会の木村聡事務局長は、
「用意しただし汁がなくなって、早く店を閉めるというところも出てきています。最近増えているのは、ほとんど市外、県外からのお客です。B1グルメに出たことで八戸せんべい汁の知名度が上がり、八戸が元気になって欲しいと思います」
とし、ここでもB-1効果が出ているようだ。