政権交代を機に大臣や副大臣の記者会見のオープン化が進んでいるが、新しいメディアの参加によって、従来では考えられなかった形式の報道が生まれている。金融庁ではニコニコ動画が、亀井静香郵政・金融担当相の奔放な発言を初めてネットで生中継した。会見開放に後ろ向きな記者クラブの姿勢とは裏腹に、オープン化の波はどんどん広がっていく。
記者クラブ主催の記者会見とは別の「もうひとつの会見」。3回目となる大臣会見は2009年10月13日の正午前、金融庁の大臣室で開かれた。参加者は約20人。東洋経済や週刊朝日、英フィナンシャル・タイムズ、そして、フリーランスのジャーナリストとさまざまな記者がいる。これまでと違うのは、動画サイト「ニコニコ動画」のスタッフが窓際に陣取って亀井担当相にビデオカメラを向け、インターネットの生中継をしていたことだ。
亀井担当相の登場に「キタ――」
ニコニコ動画はすでに、「閣僚会見オープン化」のさきがけとなった岡田克也外相の会見を中継しているが、金融庁で生中継するのは初めてだ。「家族内の殺人が増えたのは大企業のせい」といった過激な発言も平気で口にする亀井担当相。その発言のすべてがテレビよりも早くネットで流れることになった。
11時42分。亀井担当相が大臣室に戻り、カメラの前のソファに座ると、ニコ動の画面は「キタ――」「おおおおおおおう」「しーずかちゃーん」といったユーザーの歓迎コメントで埋まった。始まってしばらくは音量レベルが小さくて、声がうまく聞き取れない。ユーザーが不満のコメントを投稿すると現場スタッフがすぐに対応。ネットならではの双方向性も生かしながら、中継は進行した。
開始から7分後。突然、亀井担当相の携帯電話が鳴り始める。すかさずニコ動のユーザーから「マナー」「大臣だからゆるされるのか」というツッコミが入った。だが全体としてみると、会見をオープンにした亀井担当相に好意的なコメントが目立った。