不景気のせいで「0泊2食」という旅館プランの人気が高まっている。豪華な食事が2食付き、客室も使えて、日帰りでもゆっくり過ごすことができる。1泊したかのような気分を味いながら、料金は1泊料金のほぼ半額というお得感が人気の理由だ。仕事が忙しくて連休が取れないという人や、子どもや夫がいて家を空けられないという主婦にうけているようだ。
温泉、会席料理、部屋代込みで1万円
大阪から車で90分のところにある対泉閣(三重県名張市)は0泊2食プランを9800円で提供している。昼食と豪華な会席料理がついて、客室は午前11時30分から午後8時まで利用できる。時間内なら露天風呂や大浴場に何度でも入れる。
「泊まれないけれどゆっくりしたい」というお客の要望があり、1年ほど前からこのプランを始めたところ盛況だ。フロント担当者は、
「20歳代くらいの若いお客さまが多くいらっしゃいます。お得感のある料金で、宿泊より気軽に利用できるというのが魅力のようです」
という。
琵琶湖畔の湯元館(滋賀県大津市)でも、0泊2食プランを設けている。夕食の内容によって3つの料金があり、旬の松茸と近江牛会席プランが1万200円、近江牛会席プランが1万1700円、スタンダードプランが9300円だ。いずれも2009年10月31日までで、季節ごとに食事は変わる。客室には午前11時~午後9時30分と10時間以上も滞在でき、その間は好きなだけ入浴できる。おいしいものを食べられて、ゆっくりできるというので、女性同士のお客に人気がある。
日帰りのバリエーションが広がっている
ちょっと贅沢な0泊2食プランを提案しているのは、鬼怒川温泉パークホテルズ(栃木県日光市)だ。和室15畳と10畳の広々とした部屋に、露天風呂がついた個室を8時間利用できて、豪華な昼食と夕食付き。料金は1万5000円と高額だが、同タイプの部屋に1泊した場合には3万3600円かかることから、「1泊するのと同じくらいの満足感が得られて料金が半額になる」と好評だ。
利用者は女性同士やカップルが多く、30~40歳代が中心だ。「女性だけでゆっくり泊まりたいけど、子どもと旦那が心配」「翌日は通常通り会社に出勤したい」というお客向けで、始めて1年も経たないが、担当者は「順調にお客が増えている」といっている。
リクルートの旅行情報誌「じゃらん」の広報担当者は、
「温泉に入った後にテラスでスイーツが食べられる日帰りプランや、温泉と宿のサロンでネイルができるものもあり、0泊2食のバリエーションが広がっています。まとまった休みが取れないという人でも1日で十分楽しめると人気のようです」
といっている。
宿泊者が少ない平日限定にすることで、旅館にとって空き室を有効活用できるというメリットがある。不景気で客離れが深刻な旅館を救う新たな一手となりそうだ。